黒川塾98 ムシキング、オシャレ魔女開発者トークイベントへ潜入!!
エンターテインメント界の風雲児である黒川文雄氏主催の勉強会・黒川塾98が11月7日に、セガサミー本社内トンネル東京で開催された。「甲虫王者ムシキング+オシャレ魔女ラブandベリー開発者トーク・ナイト」と題し、ムシキングからはネブ博士こと根布谷朋範氏、オシャレ魔女ラブandベリー(以降ラブベリ)の開発者である近野俊昭氏、そして、当時、ラブベリに激ハマりしたという声優でタレントの夜道雪氏が観客も巻き込み超絶盛り上がるイベントとなった。
ムシキングはセガ的に挑戦だった
1998年にセガ入社というネブ博士こと根布谷朋範氏(以降ネブ博士)。当時セガがプロデュースするということで話題になったテーマパーク「ジョイポリス」の施設、アトラクションの開発にデザイナーとして関わったのが最初、とのこと。色々とやっているうちにムシキングに辿り着いたという。
根布谷氏がネブ博士としてデビューした当時の写真が会場のモニターに映し出されると、観客がざわざわしだした。本日の客層は20代半ばから40代前半が多く、当時のゲーム仲間を誘って参加したと思われるひとたちが多く見られた。
新しい写真が映し出されるたびに、「○○のイベントだ」と開催地をつぶやくひとが続出。
ムシキングはカードゲーム。こども向けということでセガの社風的には異質で、ネブ博士にとっても挑戦だったそうだ。幸いなことにロケテストの結果は好評で、正式稼働となった。
苦労も多数あったそうで、銀座の博品館に行列を作るほどの人気ゲームに育ったことは感無量だったとネブ博士。
ムシキングが稼働開始したのは2003年1月21日。当時セガのゲームセンターへ通っていた筆者も遊んでみたが、非常によくできたシステムだった。ルールは簡単、コレクション要素もあり、お金があるひともそうでもないひとも、それなりに遊べるのが良かった。クレーンゲームと格闘ゲームのユーザーが圧倒的に多かった時代、こどもも大人も遊べるムシキングは画期的な発明だと言える。家庭用ゲーム機でも似たようなものはあったが、ムシキングのユーザーの数は、その比ではない。
イベントも多数開催されて、全国を飛び回っていたネブ博士。熱心な観客のサポートもあって、写真の解説は盛り上がった。
ラブandベリーが女児向けのアーケードゲームを開発するという大冒険
ムシキングの話が落ち着いたところでラブベリの近野氏にマイクが移る。ムシキングのユーザーは男の子。ラブベリのユーザーはお母さんと女の子という設定のもと、開発が始まったのだそうだ。
近野氏によると、お母さんと娘のコミュニケーションを想定したとのことで、まさにこれが大ヒットの要因となった。
夜道雪氏がここで鋭い質問を。母親のほうが熱心なくらいハマったそうだ。
「どうしてクラブではなくてディスコなんですか?」
ラブベリにはディスコというステージがある。ちょっと古臭い言い方で、当時でも違和感はあった。
これについて近野氏が丁寧に説明。「クラブのイメージは10代後半から20代前半のアンダーグラウンド、ナイトシーンというイメージが濃くて、そこに女児を誘い込んでしまうのはどうかな…と思ったんです。ディスコは60年代、70年代の元気な日本のイメージで、華やか、懐かしいというそういう世界にフィーチャーすればみんなに楽しんでもらえるかな?と。」
「お母さん的にもディスコの方が耳障りが良いですよね。ディスコは社交の場、でしたよね。」と黒川氏。
黒川氏の娘もラブベリにハマったということで、やはりクラブというのはイメージ的に良くないようだ。
「ラブベリもイベントは盛況でしたよね。近野さんも現場に行ったりしたんですか?」と黒川氏。
「現場には出なかったですね。女の子の世界観がありますから、男の私は場違いかな…と思いまして。」
近野氏のこのような気遣いもヒットした理由のひとつかも知れない。
また近野氏は、ラブベリの開発当初はオシャレについて全く知識がなかったそうだ。
「めちゃくちゃ勉強しました。」
リアルショップで販売するものは、徹底的に再現性にこだわった
「女児向けのファッションブランドが当時は流行ってましたね。」と黒川氏。
「雑誌とかそういうものや流行の先読みとか、そういうのを研究しながらやってました。当時は作ってる自分たちが一番楽しいのにも関わらず、みなさんも楽しいって言ってくださるし、会社(セガ)もよくやったと言ってくれて。」
ここでラブベリのリアル店舗の写真がモニターに登場。
「こうやってオフィシャルショップもおやりになったし、外部のアパレル会社との協業みたいなことでやったんですか?」と黒川氏。
「いや、これは全部(セガ)社内でやってました。」と近野氏。
このあたりは当時のセガを知ってるひとたちは納得だった様子。
近野氏はプロのアドバイスを受けながら、製造をしていた中国まで行って、素材などもこだわったのだそう。
目指したのはカードに描かれた衣装の再現性、色や縫製にもこだわったとのことだ。
新シリーズの可能性
ラブベリが大盛り上がりして、ネブ博士の感動したエピソードなどが続き、新シリーズの可能性についても黒川氏から質問が出た。
答えたのは近野氏。
「何らかのカタチでファンに届けたいという気持ちはあります。現場にいる限りは続けたいし、作り続けなければならないと思います。」
できるともできないとも言えないとはしていたが、ファンとしては期待して待ちたいところだ。
TEXT いしかわ まさゆき(きっ舎)
PHOTO Kei Sakuhara