【インタビュー】pachaeがニューシングル「アイノリユニオン」をリリース! 超ド級のJ-POPを完成した、3人はいま何を語るのか?!
大阪を中心に活動中の3人組ポップスバンド・pachae(パチェ)が10月7日にニューシングル『アイノリユニオン』配信リリース。本作は、テレビアニメ『妻、小学生になる。』のOP主題歌であり彼らにとって初のタイアップ作品。リリースから少し時間が経ったこのタイミングでいま一度作品の魅力、そしてpachaeの魅力を紐解いていこうと思う。ポップな3人はいま、何を語るのか。たっぷりと話を聞いた。
スキルフルな彼らの気になる音楽ルーツ
Lotus初登場ということで、まず皆さんの音楽ルーツから教えていただこうと思います。
音山大亮(以下、音山):ルーツを聞かれたとき一貫して答えているのは、テツandトモの「なんでだろう」で通しています(笑)。
バンバ:それでやらしてもらっているわけね?
音山:そう! みんな、「なんでだろう?」って顔していますね(笑)。
(笑)。ミュージシャンだと?
音山:ルーツになっているものだと沢山いるんですけど、最初は、Mr.Children。そこから高校でいちばんハマったのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとボカロでしたね。その2大巨頭でした。そこからは雑食すぎて挙げていったらキリがないくらい。でも、最終的にヒトリエとフジファブリックは色んな面で尊敬していますね。
バンバ:僕の入り口は、andymori。そこから僕も雑食すぎていろんな変遷を経ていまはドリーム・ポップというジャンルが好きですね!
andymoriのどのあたりにグッと来たんですか?
バンバ:いちばん最初に観たのが、「City Lights」か「革命」のどちらかのMVやって、かっけえ!って。スリーピースもカッコいいし、もう感覚で好きになりました。衝撃がバチコーンって感じでした。
さなえ:私は、1980年代頃の曲。パット・メセニーとか、ライル・メイズとか、アース・ウィンド・アンド・ファイアーを聴いていて。そのあとは、大学生くらいからバンドの曲を聴くようになりました。
周りにパット・メセニーを聴いてる同世代はいなかったのでは?
さなえ:なかなかいなかったですけど、いるにはいました。数名くらいですけど、そこですごく盛り上がったりはしていました。
音山:コアやな〜!
さなえ:盛り上がったときは本当にびっくりして、余計に盛り上がるというか(笑)。
バンバ:多分、同姓同名の人を見つけたときくらいのテンションやろうな(笑)。
音山:どういう盛り上がり方すんねん! 「『ファースト・サークル』(1984年)は結局何拍なん?」、「私はね〜!」みたいな感じか?
さなえ:それな! 『ファースト・サークル』は好きやな〜。
3人の音楽を始めたきっかけとは?
いいですね(笑)。皆さんの楽曲を聴いているとすごくスキルフルだなと思っていて、3人が音楽を始めたきっかけも教えていただけますか?
音山:音楽自体は、小3でピアノを習って、小6で辞めました。それが最初の音楽体験だった。そこからも、ずっとピアノはやっていたし、ギターをやってみたり、高校生になって軽音部に入ってガッツリとバンドをやってみて。ただ、そのときはあまりギターは弾いてなくて、鍵盤かパワーコードだけ弾くかみたいな感じでしたね。
そこから歌い始めるキッカケは?
音山:高校時代に組んでいたバンドのボーカルと僕がめっちゃ喧嘩して(笑)。USJで喧嘩したのを覚えているんですけど。
バンバ:どういうシチュエーション?!
音山:いま思っても、向こうがすごく間違っていたと思うんですけど、周りのみんなも「え?」と焦るくらいの喧嘩をしてしまって。みんなが僕の味方をしてくれたのもあるんですけど、その子が、喧嘩が原因で「行かんわ!」と学校に来なくなったんですよ。ボーカルが不在になってしまったので、それで僕が歌うようになりました。ほんならね、めっちゃ音痴やったんですよ! 「こんなに歌われへんか?」と思うくらい音痴で、それがきっかけでギターをもっと練習しようかなという。歌を誤魔化す感じで、マイクからは離れ気味で歌っていましたね(笑)。
でも、pachaeの楽曲を聴くと、音痴だったなんて思えないし、幅広く歌える方だなと思うんです。
音山:本当ですか?! やったあ!!
歌い始めて自信を持つきっかけになったタイミングはあったんですか?
音山:芸大に通っているときも歌は才能がないから「曲作りに力を入れてやっていこうぜ」みたいな風に、教授にも周りの人にも言ってもらっていて。俺も、なんの疑いもなくそうだと思っていたし、当時は下手というか自分の声がキモかった。
卒業してから夜に弾き語りをずっとしてて、とはいえ上手くなろうとは思ってなかったけど、「どこが下手なんやろな?」と思いながら歌っていたら、どうやら鼻炎が影響していることに気づいて。ずっと鼻が詰まっていたんですけど、スーッと鼻が通った瞬間があったんですよ!22歳の頃かな?そのタイミングが来て、その日からホンマに歌えるようになりました。そこで自分が歌う世界線が見えたタイミングで作った曲、まだpachaeのメンバーにも出会ってなかったですけど、「これだったらギリ勝負できるかも」という曲が出来たんですよね。まあ、歌が下手な頃から自信だけはあったんですけど、そこでイケるなと思いましたね。
鼻炎が影響していたのが、面白い。
音山:そう、下手じゃなかったという。だから歌を頑張ろうとしている人はみんな鼻炎を治してほしいなと思いましたね(笑)。
そのとき、鼻が通ってなければpachaeはなかったかもしれない。
音山:そうですね(笑)。ピアノでバンドをしていたかもしれないですね。
バンバさんはいかがですか?
バンバ:僕は最初からギターをやり始めて。中学2年くらいのときにカッコよくなりたかったので……(笑)。ただ、難しすぎて1ヶ月も経たずに辞めて押し入れにしまっていて、中3の秋冬くらいに部活を引退して、受験勉強しなあかんというタイミングで勉強をやりたくなさすぎてギター熱が再熱したんです。もうどっぷりでしたね。分かるようになると楽しくて!
なるほど。さなえさんはいかがですか?
さなえ:私は、3〜4歳くらいからピアノとエレクトーンを習っていて。小中学校まではゴスペルを習ったり、高校・大学とエレクトーンを専攻して学んで、大学卒業と同時にヤマハのエレクトーンのデモンストレーターになって、いま、pachaeです!
では、ご家庭が音楽一家だった?
さなえ:そうですね。みんな音楽が好きでやっている感じで、両親の影響も大きいかなと思います。
ヤマハのデモンストレーターからバンドマンになったわけですね。
音山:でも、いちばんよくある流れですよ!
バンバ:トレンドやね!
音山:ヤマハの人はみんなpachaeに来る!
アティチュードがポップなら、曲もポップになる
(笑)。楽曲を聴いていると“ポップである”ということに重きを置いているなと感じていて、やはり意識している部分ですか?
音山:意識はしています。それこそジャズとかフュージョンを好きやった時期、このジャンルって薮で、かき分けないと抜け出せなくなるジャンルやと思うんですけど、日本で大きい景色を見たいのであれば、ポップスの要素は絶対にいるから、一旦そこから離れないといけない。離れられないとある種の自己満足というか、どんどん聴いてもらえなくなると思うんです。そこを通ったおばあちゃんも「なんか、いいかも」となる要素はポップスにしかないから、一度そういったジャンルからは卒業して、pachaeを組んだという感じ。
pachaeを組む当初から、そういう考えがあったんですね。
音山:そうですね! pachaeが目指すところはそこやと思っていたので。曲に関しては、覚えやすいというところも意識はしています。
バンバさんはいかがですか、ポップについて。
バンバ:音楽のジャンルってアティチュードだと思うから、自分がポップだったら自ずと楽曲もポップになるんじゃないかなと思いますね。
音山:それは暴論でもあるけどな。
バンバ:(笑)。まあ、僕は結構ポップに生きているので! ポップやらせてもらっています!
音山:ポップって曲に対する言葉ではなくて、人間に対する言葉なんじゃないかな?
バンバ:アティチュードがパンクスやったらパンクスになるからね。
音山:分かる! ポップな人間が作ったら、どんな曲でもポッピーになるんです。ここは、太字でお願いします(笑)。
さなえさんはどう考えますか?
さなえ:ポップは、素直に楽しいです。
音山:アホポップやん!(笑)
バンバ:ポッパーやな?!(笑)
さなえ:やっていて楽しいんですよ。表現しやすいのかな? そういう部分はあると思います、自分の感情を表に出せる。
嬉しい、楽しい、そして楽しむ
2024年4月のメジャーデビュー。半年が経過しましたが、振り返るとどんな時間になっていますか?
音山:一瞬やった気もするし、まだ半年かという感じもしてて。急に気付いたらメジャーデビューしていたんで、「メジャーデビューって何なんやろう?」という気はしています。でも、より多くの人に聴いてもらう機会が与えられるから、それに伴ってpachaeの良さを崩さない上でどう進化していくのか、自分たちが楽しまなアカンという範囲で、プロとしてやっていくとは何なのかは考えました。
まだ、その答えは出ていない?
音山:模索中ではあるけど、楽しむに尽きると思います。多分僕は、「こんな曲は作りたくない」というものがなくて、「メジャーデビューとは?」という質問のときにいつも違和感を感じていて、答えづらい気持ちがあるんです。これは私感ですけど、きっとメジャーデビューをされた方々って「こんな曲は」というところで葛藤している方が多いんじゃないかなと思うんです。
誰かに言われて、何かを変えないといけない。その上で「メジャーデビューとは?」という答えを持っている。ただ僕は、変えて好かれるのであれば、いろんな曲を作りたいと思うタイプなので、だから“楽しむ”という言葉しか出てこない、僕もアホポッパーですね(笑)。
なるほど。メジャーだからとって気負いすることもないし、延長線上で楽しむことが出来ているということですよね。
音山:そうですね。
バンバさんとさなえさんはいかがですか? どんな時間になっていますか?
バンバ:密度の高い時間を過ごさせていただいていると思います。関わる人も増えて、こうやって取材を受けて初めましての方と会う機会も増えて、すごくありがたい。その分皆さんに聴かれるチャンスが増えると思ったら、ニコニコしちゃいますね! めちゃくちゃ楽しいです! エキサイト感を求めちゃっているので、心がいまエキサイトしています!
さなえ:私は、本当に嬉しかったから、ここからいろんな景色を見ていく中で自分自身の芯を持って、地に足をつけてしっかり歩んでいきたいなと。より引き締まりましたね。
生のライブ感を大切にしたい
今後が楽しみですね! そして、本作『アイノリユニオン』は、初タイアップです。テレビアニメ『妻、小学生になる。』のOP主題歌ですが、お話をいただいたときの気持ちを教えてください。
音山:やったあ!ですよね。やったあ!のいちばん上の感情でしたね。
バンバ:最初は、「すごいね」くらいの感情だったんですけど、だんだんとプランが形になっていって、その「すごいね」が膨らんでいく感じでした。本当にありがたいことだなと思ったし、まだまだその気持ちが膨らんでいってる。アニメを観てまた、すげえと思っているし、ずっとそんな感じです。
さなえ:貴重な機会をいただいて、それこそバンバが言ったようにお話をいただいたときは、「どうなるんやろ?」という気持ちが強くて。それがいまアニメも始まって、観ている中で「ほんまなんや」と最近は思っていて。OP映像を観るたびに、「ホンマに流れてるわ〜」って思いますね。
音山:それは、思うな!
さなえ:ホンマやったんや!って。夢じゃなかったんやなって思いますね。
OPを観ているとこのアニメの主題歌は『アイノリユニオン』しかないなと思ったんですが、制作はどのように進められていったんですか?
音山:全ての枠組みを僕が作ったんですけど、最初は原作を読んで歌詞から書きました。ガッツリ展開がある物語だったので、展開に合わせて歌詞を変えていきたいくらいの気持ちだったんです。本当に展開が激しいので、「この歌詞は使われへん!」と思って、書き直したり、1話を観てこの歌を聴いても、最終話を観て聴いても、違和感なくスッと入ってくる歌詞にしたかったので、そこに時間を割きました。
歌詞の内容は僕ではなく、登場人物の感情をそのまま書くという感じのタイアップにしようと思って書いていって、曲のアレンジはそれに合うもので展開が多い話やから転調や展開を多く作るアレンジにしましたね。
展開はかなりありますよね。特に間奏部分のラテン調から展開していく部分。なんじゃこりゃと思いました。
音山:何じゃこりゃと思いながら演奏しています(笑)。
これは、絶対演奏も難しいですよね?
音山:これは内緒なんですけど、間奏部分のサンバみたいなところからジャズ風ソロみたいなところは、僕が弾くんですけど、まだ弾けてないです……。半分のテンポやったら弾けます。もしかしたら、ライブでもそこだけスローアレンジなるかもしれない。
バンバ:いやあ、本当にずっと難しいです。何なんやろな!今回、あまりギターっぽくない説がありますよね? フレーズが。
音山:分かる。オーケストラまではいかないけど打ち込みの雰囲気もあるし、人間が弾くことを想定してない人たちが作る楽曲な感じもあって。他もアーティストだったらライブで音を流すのかなとも思う。ただ僕たちは全部自力で弾いているので、そりゃあ難しいよなって(笑)。きっとライブを観ていただいたら、音楽をやってない方にも難しさが理解できると思います。
生楽器で奏でるということも大事にしている部分。
音山:そうやってきたからということもありますけど、頑張ったら出来るしなという思いはありますね。
バンバ:そうやね。
音山:生のライブ感は大事にしたいですよね。全てを自力でやってるって聴こえ方も全然違うんですよ。それでこのクオリティのものを生でやるって他にはいないかなと思っているから、そういう部分もライブで観てほしいですね。
バンバ:楽しいからね。
音山:ゲーム感覚みたいなところもあります。レベルアップしていく感じ。
さなえさんはやってみていかがですか?
さなえ:難しいんですけど、この曲大好きって思いながら弾いています!
音山:どんどんアホっぽくなってるで?
さなえ:本当にこの曲が大好きだから、一つ一つフレーズを大切に気持ちを込めて弾いています。
素晴らしいですね。でも、この楽曲をコピーする学生バンドも出てくるかもしれないですからね。
音山:それは、どんどん出てきてほしい。
バンバ:マジで観てみたい!
音山:それがいちばん観たいかも!
バンバ:DMとかに送ってきてくれたらね?
さなえ:嬉しいね。
音山:バズってほしいですね!
pachaeがコピーできたらヒーローになれそうですね。
音山:そっち枠のバンドだと思いますね。これをやっていたら「おお!」と思われるバンドの一つになっていたらいいなと思います。最初は軽音部でいちばんコピーされる鉄板になりたかったんですけど、だんだん自分たちのことを理解してきて(笑)。だから稀に上手いメンバーが集まったバンドとかにカバーしてほしいですね!
ちなみに、リリース後のファンの皆さんからの反応はいかがですか?
音山:まあ、道を歩けないみたいなことはまだないですね(笑)。いまのところは!
バンバ:でも、SNSでは上々じゃないでしょうか! ファンのみんなのSNSを見るのが好きなので、インスタのストーリーズをめっちゃ見たりするんですけど、サブスクの共有だったり、メンションをして上げてくださる方も多くて嬉しいですね。
「アイノリユニオン」は僕らの代名詞になる
ここで、恒例の質問がありまして。媒体名である、Lotusは直訳すると花の蓮という意味になります。本作を花や植物に例えるならどんなイメージになりますか?
バンバ:オバケケイトウとかでいいんじゃない? 派手な見た目だし、元気がなくなったらドライフラワーにも出来るし、長く愛せる花だから、いいじゃないですか? 脳みそみたいな花です。
音山:(さなえを指差して)なんかある?
さなえ:カスミソウ。私がすごく好きな花なんですよ。
音山:マジでひまわりかたんぽぽでくると思ってた(笑)。
さなえ:花束を作るときでもいちばん前に来る花ではないけど、しっかり支えてくれているような、花束全体を包み込んでくれるような役割やなと思うので、そういうカスミソウの愛のある部分がピッタリ合うかなと思いますね。
音山:途中で色が変わる花があったらそれがいいですね。展開が変わっていく曲なので、そういう花があればピッタリやなと思います。
ありがとうございます。改めて、『アイノリユニオン』はpachaeにとってどんな作品に仕上がりましたか?
音山:この曲で何かが変わったとは思ってはいなくて、ある程度、今までもどしっとしてきた曲を出してきたという自負がある中でよりパワーのある曲というか。それは僕たちから出るパワー以外からもパワーが出ているなと思うんです。作品のパワーが乗っかっているので、しばらくの間とは言わずこれからずっとメインの1曲になる“ドJ-POP”が誕生したなと思います。
すごくいい曲だと思うので、これを歌っておけばみんなが喜んでくれるという鉄板曲になるよう愛されてほしいなと思います。
バンバ:同じくですね。僕たちの代名詞になると思います。
さなえ:お客さんとも一緒に楽しめる曲だと思うので、ライブでみんなで楽しみたいなと思います!
音山:そうやね!『妻、小学生になる。』も大好きな作品やから、一緒にドーンっと行ってほしいです!
最後にバンドとしての目標・展望も教えてください。
音山:いい意味で目標は掲げてはいなくて、楽しんでやっていければそれでいい。そこに応じた運命が我々のもとに舞い降りてきて、宇宙と交わります。というのは冗談で(笑)、楽しくやっていれば、楽しいことが舞い込んでくると思うんです。楽しんだ先に広がる景色は、きっと僕たちが求めているものだと思うし、そういう風にバンドを続けていけたらいいなと思います。
バンバ:いまやれることをしっかりと、11月には自主企画の『Trick or Trick』vol.3もありますし、とにかく皆さんにはライブに来ていただきたいな思います。
さなえ:一つ一つの繋がりを大切にして、頑張りたいです!
TEXT 笹谷淳介
PHOTO 大西基