
アートワークまで手掛ける多彩な才能「さとう。」新作リリース

さとう。は、2000年生まれの静岡県出身のシンガーソングライターだ。中学時代にアコースティックギターを始め、弾き語り配信を経て、本格的に音楽活動をスタートさせた。高校3年生の時にAbemaTV『日村がゆく』の人気シリーズ『高校生フォークソングGP』に出演。崎山蒼志などを輩出した同番組で、MCの日村(バナナマン)が「声がめちゃくちゃいい」というコメントを残している。2024年にリリースした『3%』がTikTokの「#歌ってみた」動画を中心にバズを起こしたほか、本人が描いたイラストを使ったMVが話題に。同曲はSpotifyのバイラルチャートで2週連続トップ10にランクインし、最高3位を記録している。また、LINE MUSICが選ぶ次世代アーティスト「NEXT SPIKES」や、渋谷の高校生が選ぶ「ネクストトレンド」にも選出され、さとう。の代表曲のひとつとなった。Z世代を中心に人気を博し、注目を集めているさとう。が、2025年3月12日、ミニアルバム『とあるアイを綴って、』をリリースする。
新ミニアルバム『とあるアイを綴って、』で見せる「さとう。」の表現力

本作のオープニングを飾る『点滅する』は、ほぼアカペラに近いさとう。の歌声からスタートする。サビをゆっくり歌い、トーンの揺らぎ、倍音と、その歌声で一気に曲の世界に引き込む。Aメロからテンポアップする構成で、冒頭と同じメロディーのサビをまるで別物のように聴かせるボーカリゼーションで、さとう。のシンガーソングライターとしてのバリエーション、そして豊饒な表現力がわかる。
編曲に関口シンゴを迎えた『朗朗』は、高音のファルセットのニュアンスの使い分けが見事。平メロではふわりと置くように、対してサビでは半分地声を混ぜた強いアクセントを印象付け、そのコントラストが、ストーリー性を加えている。
後半に出てくる超ロングトーンでは、声量をしっかりコントロールしており、クリアかつ力強いさとう。の声の響きが、同曲のパンチラインになっている。アップチューンの『夕陽になった人』では、母音のコントロールにボーカリストとしての才能を感じる。抜いていくパターン、早めに切り上げるパターン、発声する前に一瞬の空白を作るパターン、クレッシェンドをかけて次のメロディーにつなげるトーン、と多彩なスキルを次々と繰り出し、しっかり言葉に感情をのせている。
作品全体を通して、余裕で歌っている印象すらあるが、この余裕を感情の機微の表現にあてており、どの曲もその歌声と言葉がストレートに聴く者に真っすぐ向かってくる。
時にはすべてを包み込むように雄大に。時には、いつの間にか隣にいたかのようにさり気なく。キャッチーなメロディーで普遍性を、歌声でスケール感と深みを表現できる。それが、さとう。というシンガーソングライターの魅力である。
◆ソース
・崎山フォークGP
・さとう。フォークGP
TEXT 伊藤亜希