【インタビュー】I Don’t Like Mondays.が10th ANNIVERSARY EP「FOCUS」をリリース。いままでで一番カッコいいと4人が語る渾身作、10周年を迎え何を語るのか。
I Don’t Like Mondays.が10th ANNIVERSARY EP『FOCUS』を10月9日に配信リリースした。全7曲が内包される本作、そのどれもがアイドラ節炸裂の記名性の高い楽曲に仕上がっているが、本作を聴いて思うことは、彼らはすでにこれから先を見据えているということ。今回は、「いままで一番カッコいい作品」と4人が口を揃えて語る作品についてたっぷりと話を聞いていこうと思う。
節目の10年、ようやくスタートラインに立った
直近の活動を振り返ると、デビュー10周年記念スペシャルツアーである “Island Tour”を完走され、9月7日にはデビュー10周年記念フリーライブも成功されました。皆さんにとってどんなツアー、どんなライブになりましたか?
YU:今年はデビュー10周年ということでメモリアルなことをやろうと思って、今まで行きたくてもなかなか行くことの出来なかった場所に行くというコンセプトで “Island Tour”を回ったんですけど、すごく楽しかったですね! 楽屋のないようなライブハウスでライブをしたり、なかなかバンドじゃなかったら行く機会がなかったような場所へ足を運んで。そこにも待ってくださるファンの方がいらっしゃる、そういう人たちと近い空気で音楽・ライブを楽しめるというのは、すごく感慨深いし感謝を伝えられて良かったです。
KENJI:みんな各々、バンド結成の前に別のバンドをやったり、サポートをしたりとかいろいろとあったと思うんですけど、それでも行ったことのない土地がまだまだあって。そこに行ってライブをできるってすごく貴重な機会でしたし、YUが言った通り、本当に小さいライブハウスというか。いい意味で初心に戻れる。改めて、ライブに来てくれているファンのみんなに感謝したいなって思ったし、それを経験できて良かったです。
ここに来て初心に戻れるって素晴らしいことですね。SHUKIさんはいかがですか?
SHUKI:やっぱりライブを連日やることでバンドとして実力もあると思うので、それを10周年という節目でやれたことがよかった。10周年というタイミングでいまの僕らを見せることができたのが本当によかったなと思います。
CHOJI:あれだけの短期間で同じセットリストでライブをする機会ってなかなかなくて。SHUKIが言うようにパワーアップができたツアーだったと思います。改めて自分たちのグルーヴを見つめ直す機会にもなったし、今回の“FOCUS”ツアーに活きると思います。
フリーライブはいかがでしたか? 映像を拝見させて頂きましたけど、あの盛り上がりは他では体感出来ないものになったのかなと。
YU:僕らが10年前にデビューした月でもある9月にやらせてもらって、皆さんすごく暑い中集まって頂きました。なんか温かい気持ちになりましたね(笑)。音楽をやっていてよかったなと思う瞬間でした。
ガンダムの下でライブをするという稀有なシチュエーションですよね。
KENJI:そうですね(笑)。
SHUKI:やっぱりガンダムがデカかったです(笑)。
改めて、10年を振り返ると皆さんにとってどんな時間になっていますか?
KENJI:長かったと言えば長かった。レーベル/事務所を移籍したりコロナ禍があったり、さまざまなことあった中で、僕たちが作りたい音楽の方向性にいろいろとトライして、変化し続けてきてこの10周年で改めて僕たちがやりたいことはなんなのかと原点回帰をさせてもらいました。振り返るといろんなことがあったからこそ、いろんなジャンルに挑戦することができたし、その上で知識や音楽に対するスキルを培うことができた。いまが一番バンドとしていい状態なのかなって思います。
SHUKI:毎年、試行錯誤を繰り返しただけあって、デビュー当時はもう少し曲を作ったことの満足度だったり、これ以上どんな曲を作ればいいんだろう?となるのかなと思っていたんですけど、実際やってみるとまだまだ可能性があるというか。それこそ、僕らの制作スキルも上がっているということもあると思うんですけど、バンド活動をやっていく中で「こういう曲が必要だよね」とライブと制作活動を繰り返すことによっていろんな曲を作ってきたバンドの幅というものは、振り返ると感慨深いですよね。
バンドとしての幅が広がり続けている。
SHUKI:最近は、広がったものを逆に狭めていって僕ららしさを突き詰めていっている。今回のEPでいまの僕らっぽさを表せた実感もあるので、それを10周年という節目できたのはすごく嬉しいですね。
CHOJIさんはいかがでしょうか?
CHOJI:応援してくれる皆さんがいないと多分ここまでは来れなかったし、自分たち4人が集まって何の確証もないけど、行けるという手応えを持っただけで10年間やって来れたなという思いもあります。確証のない僕らをたくさんの人が応援してくれて、本当にありがたい10年間を過ごせたなと思います。
YU:10年って長いじゃないですか。自分の人生においてバンド活動はなくてはならないもの、それがないと人生を語れないようになってしまったなと。日々、目の前にあることを一生懸命やり続けてきただけなので、10年と言われたらそうなんだという感じでもあるんですけどね。いろんなことを一つ一つ乗り越えていまがあるし、まだまだ自分たちがクリアしていきたい課題だったり、作りたい曲、世界観があると思うと、本当にまだ旅の途中。
自分たちのやりたいことを試行錯誤の中でようやく見つけられたというか。今年に入ってから見つかったこともたくさんあるし、だからこそようやくスタートラインに立ったかなと思います。
海外を経験したことで得たもの
10年で海外へのアプローチも増えました。前回、別媒体で『PAINT』のリリースのタイミングで取材させていただいた際、YUさんは「ようやく日本のメジャーシーンで勝負できる曲作りをしようというマインドになった。そのきっかけが『PAINT』だった」とおっしゃっていたんですが、日本にフォーカスすることで海外にアプローチする幅も広がったのかなと個人的には思ったんです。
YU:そんなことを言ってたんですね(笑)。少しネガティブに捉えられちゃうかもしれないですけど、いまは逆に内に感情の矛先が向いているんですよ。「自分たちとは何だ?」、「自分たちのやりたいものはなんだ?」、それを信じてやってきた結果が、海外にも応援してくださる方がいたということに繋がっている気がするんです。
その結果が自信にもなったし、これでいいんだと思えるようになった。もちろんもっと規模を大きくしていきたいし、評価されたら嬉しいですけど、そこよりも自分たちが納得できるもの、自分たちがやっていてカッコいいと思うもの、幸せだなと思うもの、テンションが上がるもの、そういうものを突き詰めていきたい。それに共鳴してくださる方がいたら嬉しいですし、そういう方がいないと続けられない。たくさんの人に支えていただいていることを今年は特に実感できているから、感謝を糧に次に行きたいと思っている感じですね。
なるほど。海外でのライブではどんな光景が広がっていますか? 日本との違いなどは感じますか?
YU:初めはびっくりしましたね。今年の頭には中国大陸でのツアーをやらせてもらって、企画だけ見たときは「人が来るんですか?」と不安だったんですけど、蓋を開けてみたら全公演ソールドアウトして、日本では盛り上がらない曲でも日本語で大合唱が起きたりして、びっくりしました。
でも、自分たちがやってきた音楽って国境や言語の壁も越えられていたんだなと再確認したというか。もちろんそこを目指してはいましたけど、自分たちがいいと思うものを生み出していたら自動的にそうなっていたという部分もある。これでいいんだって、肩の荷が降りたというか、良くも悪くもこれでいいのかな?と思っていた時期もあったので、その枷が取れた。自由に自分たちがやりたいことをやればいいんだと思わせてくれたのが海外のファンの方たちなのかもしれません。
自分たちのやりたいことを再確認する瞬間でもあったんですね。
KENJI:もともと、デビュー前から海外でやりたいという気持ちもありましたから。それが、『PAINT』をきっかけにどんどん広がっていって、最初はアニメフェスなどに呼んで頂いて。感じたのは、熱量の高さ。これには本当に驚きました。いろんな国でやっていくうちに海外だから、日本だからと気にしないでやっている自分たちもいるなと思うんです。それが嬉しいし、本来僕たちがやっていきたいと考えていたことに近づいてきている。海外と日本の垣根をもっとボーダーレスにするところを少しずつですけど達成してきているのかなって思います。
SHUKI:海外の方は音楽の楽しみ方も日本とは異なるんですよ。日本の方は真面目に音楽を聴いてくれるという感じなんですけど、海外では体感するというか。音楽を楽しみに来ている姿勢が違うなと思うし、楽しみ方が違うのであれば海外用のセットリストも考えていきたいなと思ったし、いい経験にはなっています。もっともっといろんなことをしたいという意欲に繋がっています。
CHOJI:憧れていたミュージシャンって海外の方も多いですし、ましてや自分が海外のステージに立つなんて、夢のような話だった。初期の頃は、サブスクが配信されてなかったし、キャリア的にもまだまだだった部分がありましたけど、いまはワンマンをいろんなところでやれている。これは続けてきたからこそだと思いますし、自信と手応えに繋がっています。
海外を経験し、楽曲へのアプローチに変化はありましたか?
KENJI:それは逆にないかもね?
YU:そうだね。むしろ、日本だけのとき、特にコロナ禍は日本だけに限定されていたからその頃の方が変わっていたかもしれないです。そのモードにしざるを得なかったというか、当時は、ライブもできなかったし聴いてくれるのは圧倒的に日本の方、だから自動的に日本語の詞を多くした方が心に届きやすいものをと考えながらやっていました。でも海外に出れるようになって、やりたかったことをやればいいなという方に感覚が戻っていった感じですね。
いままでで一番カッコいいと思える作品
なるほど。それでは、本作『FOCUS』についてお聞きします。本作はどのように制作されていったんですか?
KENJI:前作『RUNWAY』というアルバムを作ったときに、コロナ禍も収束していってライブというものに重きを置き始めたときにライブで映える曲が欲しいよねと作ったのが前作なんです。いまやりたい自分たちの音楽でセットリストを埋めていきたいと考えたときにまだまだ曲が足りないということがあったので、『RUNWAY』の日本ツアーが終わったタイミングで次はさらにライブを意識したもの、セットリストを埋められるような曲を作っていこうと思って。だから、今回はライブを意識した1枚になったのかなと。
年末年始くらいにコンセプトを決めて、年が明けてすぐデモを作り始めて、バンド感や自分たちの持っている直感というものを信じたかったので、1曲入魂でデモを作るというよりかは、たくさんデモを作って、みんなでディスカッションして「次のアイドラには何が必要かな」と精査しながら作っていきました。
ライブ感を大事にするということは自ずと生音が増えてくる。
KENJI:そうですね! 前作より増えていると思います。
YU:いままでで一番多いんじゃないかな?
KENJI:ドラムも全部叩いたもんね?
SHUKI:いままでは打ち込みだけの曲もあったんですけど、今回は生ドラムを軸に必要であれば打ち込みも重ねる感じでしたね。
個人的には『New York, New York』のバランスが絶妙だったというか。ニューヨークを歌っているのにサウンドはUK。UKのサウンドはアイドラのルーツでもありますよね?
YU:それぞれのルーツはバラバラだけど全員が共通してハマっていたバンドはUKだったり、アメリカのバンドだけどUK色が強いもの。それこそザ・キラーズとかザ・ストロークスとか! そういうバンドに影響を受けてきてはいたけど、この10年でそういう曲を作ってきたかと言われたら作ってなくて。やりたくてもなかなか手が出せなかったものを10年というメモリアルな年に再チャレンジしてもいいのではないかということで、作り始めたのが『New York, New York』です。
アニバーサリーなEPなんですけど、いい意味ではアニバーサリーじゃないというか。「これから先もアイドラはこんな感じで音楽を作っていくんです」という意思表明にもなっている1枚だなと思います。本当にどの曲を聴いてもアイドラっぽいんです。記名性の高さが素晴らしいと思います。
YU:あはは(笑)。ありがとうございます。嬉しいです。
リード曲は『Shadow』になりますが、こちらの成り立ちも教えてください。
YU:『Shadow』はカンテレ・フジテレビ系・月10ドラマ『モンスター』オープニング曲歌で、どうしてもタイアップとなるとご注文を頂くことも多いんですけど、今回は割と自由に「アイドラさんらしい感じで」というオファーを頂いて。もちろん、ドラマの企画書を読ませて頂いて、シリアスな部分もあるんですけど、コミカルな部分もあって。役者さんたちも個性豊かなキャラクターが集まっている作品。
ただドラマの内容を全然引っ張らなくてもいいということも先に言われたので、僕らのやりたいサウンド感で、作りたいものの中から映像とハマる時にかっこよくなりそうだなということを自由に考えさせてもらったし、そういうキッカケがあったからこそ『Shadow』は完成したので、ノンストレスで制作できたかなと思います。
サウンド的に意識したことはありますか?
SHUKI:やっぱり生音。なるべく打ち込みすぎないというところですかね。あとは意外と決めのリズムだったりセクションごとの仕掛けを音数を増やさず引き算をして、飽きさせないようにということは意識しましたね。
歌詞に関しては、世の中に対してのアンチテーゼも孕んでいるなと思ったんですけど、作詞もスムーズに?
YU:そうですね! そのスタイルというのは、『Black Humor』というアルバムの『MR.CLEVER』という曲が僕らの名刺の曲になっているんですけど、そのときに発明した作詞方法というか(笑)。自分が持っている世の中を斜めに見てしまう目を歌詞のキャラクターとして立たせていくという手法をちょこちょこ使っているんです。ただ本作の中にはその手法は使わないかもなと思ったんですけど、自分の中にはそういう部分があるから出せるなら出したいなと。
その中で、キャラクターを出してもドラマのタイアップとしても成立するっていう内容でもあったので、ここなら出せるなと思って、人間のネガティブな部分にスポットを当てた歌詞を作らせてもらいましたね。
改めて、今回のEPはどんな作品に仕上がりましたか?
YU:いままでで一番カッコいいと思っていますよ!
KENJI:原点回帰している部分もあるけど、10周年だからといっていままでを全て踏襲しようというより、「10周年の僕たちのいまがこれなんだよ」という作品になったかなと思います。YUが言うように自分たちが一番カッコいいと思う作品なので、自信を持って届けたいEPになりました。
SHUKI:僕らにしか出せない世界観を色濃く出せた1枚だなと思っているので、僕もいままでで一番カッコいいんじゃないかなと思えるくらいの作品になりました。
CHOJI:僕も一番カッコいいと思ってますよ(笑)。新しいツアーがまた今年も見せることができる、それが楽しみです。ツアーでぜひ皆さんにお会いしたいと思います。
このバンドに所属できて嬉しい
ここで、恒例の質問がありまして。媒体名である、Lotusは直訳すると花の蓮という意味になります。本作を花や植物に例えるならどんなイメージになりますか?
YU:なんだろう? 虫食べるやつ?
SHUKI:名前が出てこないよ(笑)。
YU:そもそも、花の種類をそんなに知らない……(笑)。
CHOJI:でも、10年やってきたので色々と試行錯誤した中で咲いた花という感じですよね。バラでもいいんですけど、とりあえず一つ花開いたという感じ。
SHUKI:明るい花ではないよね? イケてる花屋さんに置いてある系の花だよね。
KENJI:品のある感じなんだよな〜。
CHOJI:ダリアとか?
YU:じゃあ、ダリアで(笑)。
ありがとうございます(笑)。10年を経て、また新たなフェーズへと突入していくと思いますが、今後について考えていることはありますか?
YU:いま見つけ出した新しいI Don’t Like Mondays.像がまだまだ巨大なので、曲もそうなんですけど、ライブの規模ももっと大きくしていかないと自分たちが思い描く世界観を作りきれないと思うから、まずはそこを立ち上げていきたいなと思います。
KENJI:”Island Tour”を回らせていただきましたし、WORLDツアーも去年やらせて頂いて、今年も海外に出ることができるので、日本と世界の垣根なくもっといろんな国や日本でも行ったことのない土地へ行けるようなバンドになりたいなと思います。
SHUKI:10年前にこれから10年やりますって言われたら身構えると思うんですけど、1年ごとに試行錯誤して、気付いたら10年経っていたという感じなので、これからも自分たちが飽きないものを作り続けて、気付いたらまた10年経っていたらいいなと思います。
CHOJI:ずっと応援してくれて信じてくれる人たちのためにも大きいステージでやれるようにどんどん成長していきたいです。
最後にYUさん。本作『FOCUS』で原点回帰してみて率直にいかがでしたか?
YU:自分で言うのは恥ずかしいですけど、日本でこういう曲をやれるバンドを作れてて嬉しいなって思います(笑)。やはりどうしても、ミュージシャンの中には、自分のやりたいことと求められているものの狭間で悩む方もきっと多いと思うんです。でも僕たちはそういうものに抵抗しながらやり続けてきて、それが結果に繋がっている。それは、スタッフ、メンバー、みんなで同じ場所へ向かえているからこそなんですよね。だからすごくいまの環境には感謝ですし、ファンの方にも恵まれている。『FOCUS』を制作して、そんなことを思いました。
TEXT 笹谷淳介
PHOTO Kei Sakuhara
リリース情報
タイトル:FOCUS
配信日:2024年10月9日(水)
ツアー情報
I Don’t Like Mondays. “FOCUS” ASIA TOUR