【インタビュー】BLUE ENCOUNT「自分の後世にまで語り継ぎたい楽曲に」あなたに贈る「gifted」
4人組ロックバンドのBLUE ENCOUNTが9月11日に、ニューシングル『gifted』をリリースした。同曲は、Netflixシリーズで放送されている鈴木央先生原作のアニメ「ライジングインパクト」の主題歌に起用されており、アニメの世界観に寄り添いながらも、ブルエンらしい熱い音楽性を貫いた一球入魂の楽曲に仕上がっている。今回Lotusでは、『gifted』に込めた一つひとつの言葉の欠片たちを、余すことなく8000文字のインタビューとしてお届けしたい。
主人公と自分を照らし合わせて共通項を探した
以前インタビューをさせて頂いた際に田邊さんは、歌詞を書くときは「喜怒哀楽」の中でも「怒」を軸に書かれることが多いとおっしゃっていました。今作の『gifted』は、どの感情の部分が軸になっていますか?
田邊駿一:うーん、怒りも悲しみも今回はなかったかもしれないですね。この曲は希望的な答えだと思っているので、珍しくこのときは怒っても悲しんでも憂いてもなかったです。この曲は1年前に書いた曲なんですよ。
結構前に制作されていたんですね。
田邊駿一:そうなんです。去年の武道館をやったあとぐらいに作っていたので、その頃は凄く穏やかだったんですよ(笑)だから穏やかな気持ちでこの曲ができたし、そういう壮大な曲調も出てきたんだと思う。でも、言うなら「喜び」と「楽しむ」ですね。
高村さんと江口さんにお聞きしたいのですが、『gifted』はどんな感情表現がテーマだと思われましたか。
高村佳秀:僕も、「怒」はあまり感じなかったですね。ただライブとかでやっているのを見ると、「嬉しい」とか「楽しい」とかそういう感情だけで歌っているわけではないんだろうなっていうのは思いますね。訴えかけるというか、単純な喜びだけではないというか。
でも感情表現を選ぶとすると、「怒」の要素は少しあるかもしれないです。叫ぶっていう感じじゃないですけど、存在証明をするために必死に何かを発しているのはあるんじゃないかなって。
「怒」の要素を少し感じられるのですね。
高村佳秀:僕自身が、ドラムを叩いていてそういう気持ちになったりもするので、そういうのはあるかもしれないですね。
江口雄也:僕も高村と同じで「怒」のエネルギーが、発散する力というか。それを糧にして、「自分たちの音楽はカッコいいんだよ」って思ってもらえる気がしていて。「楽しい」っていう感情も勿論あるんですけど、マイナスの力の方が発散するエネルギーには変わっているとは思いますね。
『gifted』はNetflixシリーズアニメ『ライジングインパクト』の主題歌として書き下ろされたかと思いますが、このお話を頂いたときのお気持ちはどうでしたか。
田邊駿一:それこそ「喜怒哀楽」でいう、「怒」や「哀」の部分から最初の仮歌詞は書き始めました。そういう感情から戦って成長していくっていう主人公ガウェインの感覚で書き出したんですけど、仮歌詞を1回提出したときに制作の方々から「ここだけちょっとニュアンスが違うかもしれません。」って言われたんですよ。「主人公が弱気なタイプではなくて、最初から自信を持っている性格でこの作品は動いていくんです。」というお話を伺ったときに、「そっちの捉え方か!」って思ったんです。いつもやるのは、主人公と自分を照らし合わせて共通項を探したりするんですけど、そこで見つけたのが「最初から自信がある」っていう部分で。それが、バンドを始めたときの自分にそっくりだったんですね。あの頃って「俺は一番歌が上手いし、どんなもんやお前ら―!」みたいな感じでライブもしていたし。そこから東京に上京してきて、色々なことを経験して打ちのめされて今がある。でも、それでも前を向いている自分がいるっていう所が腑に落ちたので、その瞬間から色々歌詞を書き進められたと思います。
アニメサイドのオーダーがありながらも、ご自身の感情とリンクができたんですね。
田邊駿一:そうですね。そのおかげで自分の感覚で書けたのもあったと思います。
高村さんはいかがですか?
高村佳秀:僕はNetflix信者と言っても過言でもないぐらい、Netflixをめっちゃ利用させてもらっていまして(笑)
田邊駿一:言い方な(笑)
Netflixへの愛が深いんですね(笑)
高村佳秀:僕の中でNetflixはめちゃくちゃ大きい存在なんですけど、そこで放送されている番組で僕たちの曲が流れるっていうのは、ビックイベントでしたね!なので、仕上げる楽曲も「いつもより一味加えたい!」っていう気持ちを持って、この作品に挑みました。
江口さんはいかがですか。
江口雄也:僕は幼少期からジャンプが好きで連載をよく読んでいたんですけど、その黄金期を支えた作品の一つが『ライジングインパクト』だと思うので、その作品に携われて嬉しいですね。
BLUE ENCOUNTは89秒職人
田邊さんは、何かテーマがあった方が歌詞を書きやすいタイプとのことですが、アニメ主題歌は書きやすいですか?
田邊駿一:書きやすいことはないですね。勿論テーマがあって常に書いてはいるんですが、野面で新曲を出すのとタイアップが付いていて出すのだと、明らかに後者って原作のファンの皆さんや、その先のカルチャーイズムが結びついたリスナーの存在がいます。だから、そこの部分を考えて制作をしていかないといけないのが、タイアップの大事な所だと思っていて。セオリー通りに作れば良い訳ではないから、それが大変ですね。後、アニメって89秒に曲を落とし込まないといけないんですよ。
89秒なんですか!
田邊駿一:そうなんですよ。なので、89秒サイズで作るっていうのが結構大変で…。90秒以上あった曲を編集することもできるんですけど、やるからにはそれを省いた状態でお届けしたいっていう気持ちがあるので89秒で作ります。いつも89秒という壁と戦いながらやっていますね。BLUE ENCOUNTは89秒職人だと思います。最近思うのが、ライブってまさにその89秒の世界と似ているなって感じているんですけど、その限られた短い時間で如何に心を掴むかっていうところで、僕たちは戦ってきている。そういう意味では、89秒で如何に心を掴むかはリンクするなって思います。
ブルエンさんって、アニメの世界観に寄り添いながらもちゃんとBLUE ENCOUNTらしさが必ずあるところが魅力だと思います。
田邊駿一:嬉しいですね。そこは絶対に逃げたくないです。ライブでできる曲を作りたいと思っているし。「これは逸脱しているけど、俺らっぽくないけどやるか」みたいなところは、まだないです。もしそういうときが来たとしても、BLUE ENCOUNTに持っていくと思いますし。最終的にはライブで戦える曲になっていると思う。それで言うと、『バッドパラドックス』は聴かせるために作ったところが強かったけど、今じゃフェスで飛び跳ねるための楽曲になっていますもん。生まれたてのときって、この曲がどう成長するかが誰もわからないんですよ。「ライブ用に作ったぜ!」って言ってもライブでやらない曲もあるし(笑)だから、『gifted』はこの夏凄く化けたなって思う。一瞬で主役の曲になりました。
生きるという才能を授かった奇跡の生命体
タイトルの『gifted』は「神様から授かった才能を持っているんだ」という意味合いがあるそうですが、このタイトルが浮かんできたのはどんなタイミングでしたか。
田邊駿一:『ライジングインパクト』の登場人物たちが持っている技や個性が「ギフト」って言っているんですけど、それもあって最初タイトルを決めるときに「ギフトかな?」って思ったんですよ。そのときに、「自分が持っている才能は何なんだろう?」って考えたときに、「特技ではないけど音楽を作ることだ」って感じて歌詞を書き進めていきまして。最終的に「生きるという才能を授かった奇跡の生命体」という歌詞が書けたときに、「これは『gifted』だな」って思ったんです。「生み出した才能ではなくて、これは授かった才能なのか」と腑に落ちたと言いますか。0から1になる才能の人も勿論いると思うんですけど、大体の人って父ちゃん母ちゃんが育ててくれたおかげで、今がある訳だから。育ててくれたことや、出会ってきた人や物によって「俺ってこういう才能があるなって」気付けることが大事だと思うんです。そこから「ギフト」じゃなくて、『gifted』に辿り着きましたね。
そういった背景があったんですね。
田邊駿一:一人で何かっていう人生じゃないんですよね。常に誰かに支えてもらいながら生きているので、今回はまさに授かったタイトルだなって思っています。
『gifted』は既に配信リリースされていますが、リスナーから圧倒的に心に響いたという声が多いなと思ったのが「生きるという才能」というフレーズですよね。
田邊駿一:この曲も誰かにとっての『gifted』になればいいなって思って作っていて、自分の後世にまで語り継ぎたいなっていう曲になっていると思います。なので、お客さんからそういった声が届いているのは、自分のメッセージがストレートに届いたんだなって思って喜びを感じました。フェスとかでも、涙しながら聴いてくれる人とかもいて。これまでもブルエンのメッセージソングって多いですけど、いつもとは違う感覚といいますか。歌っていて自分も心が洗われる感じで。育ってきてそうなる曲っていうのはあるんですけど、新曲でこんなに思ったのは初でしたね。