インタビュー

【インタビュー】Crossfaith「再生と進化 ―活動休止を経て見出したバンドの本質」

【インタビュー】Crossfaith「再生と進化 ―活動休止を経て見出したバンドの本質」

『DV;MM¥ SY5T3M…』に込めた葛藤、ポジティブとネガティブの均衡を求めて

7曲目の『DV;MM¥ SY5T3M…』は心をかきむしるような楽曲ですが、これは歌詞を書き直して時間がかかったそうですね。特にどういったところに苦労されたのでしょうか?

Koie :アルバムを制作していく途中で、 メンバーによってちょっと解釈が違ったりしたんです。具体的にいうと、ポジティブなもので埋め尽くそうという意見があったり。でも自分個人としてはネガティブなところを通り抜けてきたんだから、やっぱりネガティブな部分を入れたい、と。あの期間を描かないというのも、嘘になってしまうな、と感じたんです。

 でも『DV;MM¥ SY5T3M…』は、孤独とかフラストレーションみたいな部分と、それとは相反するマッチョな楽曲という部分があるなと思っていて。最初は「ポジティブなもので書いてみよう」と思って書いていたんですけれど、自分でしっくりこなかったんですよね。その方向性だけでは、この曲を表現しきれなくて。

そもそも『DV;MM¥ SY5T3M…』というタイトルは歌詞が入る前の仮タイトルで、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界観からインスピレーションを受けた部分がありました。主人公の碇シンジくんとダミーシステム(特務機関NERVがEVAに導入した無人制御システム)との葛藤というか。シンジくんは戦いを望んでないけど、ダミーシステムがシンジくんの意思に反して、どんどん戦いに挑んでいく、みたいな。2面性を楽曲に落とし込もう、というアイデアを思いついて完成していきました。 その中で俺が見ていた、例えばメンバーのTeru(Program / Vision)の(活動休止時の)状況だったりを描きたいというのがあって。Teruとは30年近くの付き合いなので、見ていてやっぱり痛々しい部分もあったし、苦しんでいる姿を見ていたので。それが楽曲になったんです。

先ほど「遠くを見るんじゃなくて、まず1番近い部分に目を向けなくてはいけない」という話が出ましたが、身近なものに向き合うのは濃密な分、逆に言いにくい部分もあると思うんです。だからこそ完成した時の手ごたえは、また全然違ったものになった、ということでしょうか?

Koie そうですね、リスナーの中でも同じような境遇の人は絶対に多いと思っていて。そっちの方が伝わるというか。楽曲、歌詞の世界観的にも、 別にハッピーエンディングでもバッドエンディングでもないというか、そういう描き方をしてなくて。本当にその状況を歌うこと自体が大事かな、と思っています。

来年2月に控える集大成と新たな挑戦

私たちのメディアは『Lotus』、「蓮」という名前なのですが、Koieさんが今回のアルバム『AЯK』を花や植物に例えると、何だと思われますか?

Koie:あまり花についてくわしくないので気の利いたことは言えないんですけど、 ぱっと思いついたのはタンポポですね。タンポポってコンクリートの隙間からでも生えてくるじゃないですか。どんな悪い状況でも、頑張って咲いている力がある。見た目のきれいさではなくて、作品の持っているアティテュードというか、メンタリティーみたいなところでそう感じました。

ありがとうございます。アルバムラストを飾る、ドラマティックで無限の広がりを感じさせる『Canopus』では、「自分たちは変わらずバンドとして生きていく」という思いをのせたそうですが、今、バンド続けていくために大事なのはどんなことだと感じていますか?

Koie:2012年ぐらいから海外ツアーに行き出して、その時点で1つの夢は叶ってしまって。俺たちがここから先、次のステップに行くにはどうしたらいいんだろうと考えていました。何者かになろうとしすぎていた部分もあって、その中でバンドの真の面白さを見失っていたような気がします。 でも今はツアーも新曲をプレイすることも、とても楽しくて。本当に面白いことを重視できているという意味では、原点回帰していると感じています。自分たちがこれから成し遂げたいことにたどり着くまでも、楽しいバイブスがあった方が近道だと思いますし。

今回のアルバムはバンドにとって、将来的にどんな作品になりそうですか?

Koie :アルバムが完成した時、「めちゃくちゃ激しいしエッジィだけれど、すごく聴きやすくて繰り返し聴ける作品になった」と感じました。音楽ストリーミングの台頭もその要因の一つだと思いますが、最近のいろいろなアーティストの作品傾向として、単曲毎で聴くにはいいけど、アルバムを通して聴くことを想定してないのかも、と思います。  俺たちが昔すごくハマっていた作品は、アルバム通して聴いて、ちゃんと聴きやすい部分があるというか。ずっと聴ける作品は非常にいい作品だと思うので。そういう意味でも、このアルバムは長く愛される作品になるだろうな、と感じます。

まだアルバムツアーが続きますが、来年2月1日、2日には幕張メッセでバンド史上最大規模のワンマン「OUR FAITH WILL NEVER DIE」、主催フェス「HYPER PLANET」といった大きなイベントが 控えています。現段階でどういうものになるのか教えていただけますか?

 Koie:ワンマンに関しては、本当にCrossfaithの集大成的なショーになればいいな、というのと、アルバムの中でも言っていることなんですけど、これはあくまで通過点であって完結ではないんです。このアルバムの最後にも「もう次にいくぞ」と歌っているので。俺の中ではその足跡をここでしっかり残そうと思っています。公演のタイトルも、アルバム最後の曲『Canopus』の<Our faith will never die>(信念は残り続けていく)という歌詞からとっているので。Crossfaithがここから更に旅していく中で、大きな通過点のライブになる、と思っています。

フェスの方はCrossfaithならではというか、今までもずっと他の日本のバンドがしてこなかったことをやりたい、というのもあって。もちろん海外のアーティストを呼ぶ予定ですし、ロックバンド以外のアーティストも入れ込んでいこうと思っています。

フェスの方は新たなものを開拓して、新しい惑星、HYPER PLANETを見つけようぜ、というコンセプトがあります。それはかつて自分がそういう体験をしたことがあるからこそで。昔、自分がSONICMANIAに行った時に、お酒も入っていて、疲れて夜中の2時3時ぐらいに外でチルっていて、ちょっと戻ってみようかと思って会場にふらっと戻ったんですよね。その時に偶然見たアーティストに「何! このバンド!」とすごく大きなものを食らったりとか。そういう経験をみんなにしてほしくて。 もちろんたくさんの仲間のバンドにも出てもらうんですけど、俺たちのファンと日本のロックシーンが好きというファンにとって、これまで経験したことのないものを1つでも見せられれば、と思っています。

TEXT キャベトンコ

Photo by SHOTARO

リリース情報

ニュー・アルバム
タイトル:『AЯK』
リリース日:2024.06.26 ON SALE!!
 
【通常盤】
WPCL-13588/¥3,300(税込)

▶配信はこちら

ライブ情報

“Crossfaith AЯK Japan Tour 2024”
7月2日(火)神奈川 CLUB CITTA’
7月9日(火)山口 周南RISING HALL
7月10日(水)広島CLUB QUATTRO
7月12日(金)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
7月15日(月・祝)沖縄 桜坂セントラル
7月24日(水)岐阜 club-G
7月25日(木)愛知 名古屋 ダイアモンドホール
7月27日(土)静岡 SOUND SHOWER ark 清水
8月2日(金)群馬 前橋 DYVER
8月6日(火)兵庫 Harbor Studio
8月7日(水)京都 KYOTO MUSE
8月9日(金)奈良 EVANS CASTLE HALL
8月15日(木)長野CLUB JUNK BOX
8月17日(土)新潟LOTS
8月18日(日)石川 金沢EIGHT HALL
8月22日(木)青森Quarter
8月24日(土)宮城 仙台Rensa
8月25日(日)福島 郡山Hip Shot Japan
9月12日(木)北海道 CASINO DRIVE
9月13日(金)北海道 PENNY LANE24
9月16日(月・祝)茨城 mito LIGHT HOUSE
9月20日(金)愛媛 松山 WstudioRED
9月22日(日)福岡 DRUM LOGOS
9月23日(月・祝)熊本B.9 V1
9月26日(木)大阪 三国ヶ丘FUZZ
9月27日(金)大阪 GORILLA HALL OSAKA

アーティストプロフィール

世界を舞台にライヴ活動を展開している、大阪発の5人組メタルコアバンド。

メンバーはKoie (Vocal)、Teru (Program / Vision)、Kazuki (Guitar)、Tatsuya (Drum) 、Daiki (Guitar)の5名。

ストリングス/エレクトロニカを随所に織り交ぜたドラマティックなサウンドを以て、メタルコア/叙情系ハードコア、スクリーモ要素のあるキャッチーなメロディーを武器に独自の世界観を造り上げる。

全世界のロックフェスティバルなどを歴戦しており、海外感覚も有した日本のラウドロックを代表するアーティストのひとつとして、日本国内のみならずワールドワイドに展開するポテンシャルを持ったバンド。

2024年6月に約6年ぶりとなるアルバム『AЯK』をリリース。

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