インタビュー

【インタビュー】Crossfaith「再生と進化 ―活動休止を経て見出したバンドの本質」

【インタビュー】Crossfaith「再生と進化 ―活動休止を経て見出したバンドの本質」

活動休止を経て再始動したCrossfaith。危機を乗り越え、音楽への情熱を再確認した彼らが、新たな挑戦と共に帰還した。最新アルバム『AЯK』に込めた思いと、バンドとしての変化、そして今後の展望をボーカルのKoieが語る。

地獄からの帰還、危機を乗り越え再出発

『AЯK』はアルバムとしては6年ぶりで、ファンの方々にとっては待ち望んだ作品ですが、実際に7月から始まったアルバムツアーではどんな反応がありましたか?

Koie:今回の作品はリリースしてまだ1か月ちょっとぐらいなんですけど、一緒に歌ってくれたり、ライブに備えて事前にしっかりと聴きこんでくれていて。あとはツアーの対バン相手や仲間、友だちも「今までで1番いい」と言ってくれて。 すごく良い反応を各所から頂けていますね。

非常にポジティブなエネルギーにあふれるアルバムだと思うのですが、活動休止期間といったバンドの存続に関わることも起きて、いろいろな感情があったと思います。それに関してはいかがでしたか?

Koie:この作品を作り出そうとした時には、ある程度、気持ちの整理がついていたというか。むしろ曲を作り出すまでがすごく大変で、 “(バンドを)解散したほうがいいんじゃないか”といった意見がメンバーから出たことも正直ありました。でもライブを再開した時から180度変わったというか。これまでライブというものにどれだけ救われていて、それが今の自分たちのすべきことで、いるべき場所だったのかというのを痛感しましたね。だから作品を作っている途中はすごくポジティブだったんです。

もう1回バンドでやりたい、音楽でもう1回目標を立て直そうと思い至ったのに、何が突破口になったのでしょうか?

Koie:そもそも2022年にバンドが活動休止になって、 その時に全員が地元に帰って「1回休もう」となったんですけれど、俺は何よりCrossfaithというバンドがなくなってしまうことが1番不安でした。活動を休止してすぐに「どうやったらこのボロボロになっているCrossfaithという船をもう1回修繕して出航できるのか」といったことを考えていましたね。

活動休止前は、自分でもバンドが不安定になっていたのはわかっていたので。せめて皆が向いている方向は一緒にしていかないとならない、と思い、これからどうやって進んでいくのかを皆で話した結果「ライブをしよう」となったんです。これ以上はジタバタしていられないというか、話し合ってばかりいても別に状況が変わるわけじゃない。自分たちがライブに救われてきたという感覚はずっと昔からあるので、 そこに1回立ち帰ろうとメンバーに提案して。そうしたらみんな「よし、やろうぜ」となって。 もちろん不完全な状態のままライブをしてもいいものなのかとか、実際にショーとして完成できるのかみたいな不安はあったんですけれど、大事なことはそこじゃなくて、やるかやらないかだと。 やれば絶対に状況は変わると信じていたので。「ライブをやろう」となったのが、去年(2023年)の6月のshibuya CYCLONEでのライブでした。

バンドとして今までにない経験を経たからこそ、周囲から「今までで一番いい」という反応になったということでしょうか?

Koie:そうだと思いますね。このアルバムができた時も、今までの作品よりも確実に突き抜けているというか、今の俺たちCrossfaithというバンドの勢いというか、「前に進んでいこう」という思いが、かなり反映された作品だと思います。

1曲目の期待感あふれるインスト曲『The Final Call』を経て、2曲目の『ZERO』は嵐のように畳みかけてきます。冒頭の歌詞は<THIS IS THE CLAIMED RESPONSIBILITY WE’RE COMING BACK FROM HELL>(これは俺たちからの犯行声明 遂に地獄から帰ってきたぜ)となっていますが、どのような思いを込めたのでしょうか?

Koie :ちょっとニヒルにニヤリとしている方が俺ららしいな、と。しかも新体制1発目で楽曲の勢いもあったので、出だしの1行目から「またCrossfaithが何かやってくれるんだ」というのを感じてほしくて。バンド自体がシーンにおいてもそういう存在だと思っているし。コール&レスポンスできる言葉が自分の中で浮かんできたんです。地獄からさらに強くなって帰ってきた、というのを表現したかったですね。『ZERO』は初披露のときからすごい反応でした。YouTubeで(Music Videoを)公開した時も「Crossfaithが帰ってきた」とみんな言ってくれていて。 楽曲の雰囲気はもちろんCrossfaith節ではあるんですけど、Daiki(Gu)が新たに加入したことによって生み出されるグルーヴ感があって。パートの中でもコーラスに当たる部分とか、今までのCrossfaithだったらおそらく「ちょっとバウンシーなビート(弾むような軽快なリズムのこと)にしようよ」となっているところも、「いや、ここはもう突っ込んでいくでしょ」と速いビートをチョイスしたり。それぐらいの余裕がありながら作った作品です。

「まずは1番近い部分に目を向けなくてはいけないと思った」

4曲目の『God Speed feat. WARGASM』はUK出身のロック・デュオWARGASMとの楽曲でハイスピードに駆け抜けていきますが、どのような背景で制作されたのでしょうか?

Koie:『God Speed feat. WARGASM』はまず、そもそもの楽曲自体突き抜けたものをというのがテーマとしてあったんです。WARGASMというバンド自体は前から認識していて。彼ら自身もCrossfaithのことを雑誌を通して知っていてくれたり、ライブも見たことあると言ってくれていて。音楽的にもCrossfaithと親和性を感じたので、最初からこれはWARGASMにやってもらおうというところからスタートし、実際にInstagramで連絡を取ってやり取りをしていきました。

曲自体がユーロトラックのバイブスがあるので、そこにさらにUKのベース・ミュージックだったり、WARGASM自体がロックとミックスしているんです。例えばThe Prodigyとかに代表されるようなサウンドを彼らは持っていて、僕たちもそこはすごく大好きなので。かなり自然な感じで楽曲制作は進んでいきましたね。

WARGASMは、ボーカルのSamがプロデューサー的な立ち位置で曲を作っているので、実際に楽曲に対してアレンジを加えてくれる場面があって。「God Speed」は、楽曲が95%ぐらい完成しているような状態でミュージックビデオを撮っていたんですけど、その撮影の合間に最終のアレンジの詰めを直接話し合って。人としても本当にいいやつらで、初対面なのに初めて会った感じがしないというか。ジョークもわかるし、俺たちがどういうものを作りたいという方向性もすぐに理解してくれていて、逆に「こんなに自然にいく!?」というぐらいスムーズに制作は進行できました。

『God Speed feat. WARGASM』は、アルバムの中でも特にユーモアとキラキラ感がある楽曲ですね。

Koie:それは俺たちも狙って作っていました。今までのCrossfaithだったら少し慎重になっていたのかなと思うんですけれど、今のCrossfaithは既存のイメージは保ちつつも新しいことにはどんどん挑戦していきたいなと。ちょっとネタ的な要素を入れることに対しても、面白いからやろうという姿勢になっていて。『God Speed feat. WARGASM』は楽曲にもミュージックビデオにも、それが反映されていると思います。

そういったところからも、バンドの姿勢が今すごくアグレッシブなんだなと伝わってきます。

Koie:今までは何かしらのテーマとかメッセージとかが絶対にないといけないとか、もちろん今でもそういう想いはあるんですけれど、少し説教くさいように感じるというか。改めて(今作の)歌詞を見直してみると、逆に今の方がリアルなんじゃないかと感じます。だから今回のアルバムは明確なコンセプトを設けていないし。 前作の『EX_MACHINA』(2018年8月リリース)というアルバムだと人工知能といったコンセプトがあったんですけれど、あれはあれですごく頭を使って、「これは違う。これはいい」と選定するのに時間を割きました。でも今は自分が思っていることを書けているので、そういった意味では今作は成功だったのかな。本当にバンドのバイブスといったものをすごく重視して作った作品ですね。

今お話を伺っていて思ったんですけど、過去に1行の選定に時間をかけたからこそ、バイブスで作るという選択ができたということなのかなと感じました。逆にそれに向き合ってないと説得力が違うんだろうな、と。

Koie:それも活動休止の期間があったというのがすごく大きいと思います。活動休止から復活する時に、まずは自分たちが楽しく音楽をプレイして、どうしたら自分たちの今のフラストレーションをエネルギーに変えたものとして伝えられるだろう?ということの方が大事だな、とわかったので。この作品にはそういうエネルギーが出ているのかもしれないですね。 今までは「音楽で世界を救うぞ」みたいに、何者かになろうとしすぎていたというか。それは大事なことだと思うんですけど、遠くを見るんじゃなくて、まず1番近い部分に目を向けなくてはいけないな、とすごく思いましたし。俺たちは自由奔放に音楽をやって、人々にエネルギーを与える。そのエネルギーをもらった人たちが、どういう行動に移していくかというところの方が、今は大切だと感じています。

1 2
ページ上部へ