【インタビュー】大原櫻子「自分の根本を振り返りつつ将来に対して気合が入った」
俳優、アーティストとして幅広い活動に取り組み続ける大原櫻子。今年音楽活動10周年を迎え、8月21日に全シングルを収録した初のオールタイムシングルベスト『Anniversary』をリリースする。アルバムには、デビューのきっかけとなった映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の劇中歌『明日も』の続編となる新曲『Anniversary』を収録。この作品は当時の楽曲プロデューサー亀田誠治と再びタッグを組んで制作されたという。さらに同映画で登場する超人気バンドCRUDE PLAYが歌っていた『サヨナラの準備は、もうできていた』のカバーにも挑戦。今回は2曲の楽曲制作で感じたことについて聞いた。さらに10代、20代を駆け抜けた彼女の10年の活動を振り返ながら、大原自身が感じた自身の変化について語ってもらった。
伝える言葉の選択に時間をかける
今回発売される『All Time Single BEST Anniversary』はDisc1、Disc2ともに17曲収録されています。10年という年月の濃さが現れていますが、大原さんは過去の作品をまとめて聴いて、どのように感じましたか?
大原櫻子:率直によくやってきたと思うんですけれど、改めて順番に曲を思い出していくと、自分の成長記録のようなものが目に見える気がしました。 10年前の曲はハツラツとして元気で、10代の時だからこそ歌えた楽曲だったけれど、どんどん曲も大人っぽくなっていっているんだな、と。成長を感じますね。
これまでの軌跡を見返されて、ご自身でしか気がつかない変化もあると思うのですが、その点に関してはいかがですか?
大原櫻子:今でも『ちっぽけな愛のうた』(映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の劇中歌)などを歌う機会がたくさんあるんですけれど、 改めて楽曲を練習する時にオリジナルの10年前の自分の声を聴くと、やはり幼いですね。ただ右も左もわからない幼い感じが、この『ちっぽけな愛のうた』の歌にとても合っているというか、この時の良さが入っているなと思いますね。
なるほど。声はどう変化したと思いますか?
大原櫻子:この10年は山あり谷ありで、声を壊したりして発声の仕方が変化しました。声色も変わったし、表現がふくよかになったとも思います。
いろいろな経験したからこそ、歌えるようになった曲もある、と。
大原櫻子:そうですね。特に自分が作詞に携わるとなった時に、それを感じます。
大原さんが作詞に最初に関わったのが『瞳』(2015年1月リリースの2ndシングル曲)ということですが、その時と作品への向き合い方については、どんなところが変わったと思いますか?
大原櫻子:向き合い方は変わらないですね。強いて言うなら言葉の選び方かな。「もうちょっと深みのある言葉はないかな」と探るようになりました。『瞳』は『第93回全国高校サッカー選手権大会』の応援歌ということで、実際に試合を見に行って書きたいと考えて、会場に足を運び、その時の景色や感じたことを歌詞に入れました。
同じ意味を伝えたくても、言葉によって受け取る側の印象はまったく違うんだなと年々感じます。だからこそ、「こういうことを伝えたい」と思い浮かんでもそれで確定するのではなくて、「もっと別の表現はないか」と探る時間がすごく多くなりました。やはりボキャブラリーの多さが本当に大事だなと思います。
実際に体験して書いた詞で、思い出深いものは何でしょうか?
大原櫻子:『ひらり』(思い出と桜を重ね合わせた楽曲、2017年3月リリース6thシングル)という曲はいただいてから母校を思い出したので、母校に遊びに行って、グランドや教室、 部活の場所などいろいろ見てレコーディングしました。
記憶していた学校よりも、実際にみると小さかったりしますよね。
大原櫻子:「あれ。こんなに机って小さかったっけ?」「こんなに道は狭かったっけ?」みたいな感覚になりますよね。それだけ自分が大きくなっている、ということなんだろうとは思います。
新曲は亀田さんからのメッセージ
今回、新曲『Anniversary』が収録されています。この曲はデビューのきっかけとなった映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の挿入歌『明日も』の続編的内容だそうですね。
大原櫻子:この曲は亀田さんに 「お任せします」とお願いしてできたんです。それで「どんなことを歌いたいのか」とか「どんなテイストのメロディがいいか」といったことを聞かれたんですけど、 ぜひそこは亀田さんにお任せしたくて。
『Anniversary』は『明日も』の続編的な感じの内容ですけど、亀田さん的には『頑張ったっていいんじゃない』(2014年6月に大原櫻子(from MUSH&Co.)名義でリリースしたシングル曲)とか、それこそ『瞳』だったり、これまで出してきたいろいろなシングルの要素が入っているとおっしゃられていて。本当にそうだなと思います。
ご自身でこういうことを歌いたいとリクエストするのではなく、亀田さんにお任せしたいなと思った背景を教えていただけますか?
大原櫻子:私の初めてのソロ曲が『サンキュー。』(2014年11月リリース)だったんですけれど、歌をいただいた時には、「今の私が歌いたいことを、なぜこんなに明確にわかってくださるんだろう」という印象がとても大きくて。だから今回もお任せしたら、逆に私が歌いたいことがわかるんじゃないかなと思ったんです。7年ぶりとはいえ、デビューから知ってくださっている亀田さんへの信頼もありました。 亀田さん以外の方とクリエイティブする時間もありましたし、その間も客観的に見てくださっている感覚があったので。私の変化を亀田さんが曲にするんだったら、どんなふうになるんだろう?という楽しみがすごくありました。
なるほど。実際にこの曲を聴いていかがでしたか?
大原櫻子:まずこの曲を聴いて、亀田さんからのメッセージだと思いましたし、ラブレターだなという喜びもありました。あと10年間を走馬灯のように思い返せる曲ですね。みんなそうだと思うんですけれど、谷あり山ありあったこの人生で、あの時にこんな言葉に支えられたなとか、こんな人がいてくれたなとか、自分を支えてくれた人を思い出せる曲だなと感じて。そういったことを思い出しながら、明日からちょっとまた頑張ろうかな、と思ってほしい楽曲です。
確かにご自身でこの10年を振り返って曲にするというのはすごく難しいですよね。思いがありすぎるからこそ、客観的に歌いたいことを整理してもらえたという感じでしょうか?
大原櫻子:そんな感覚もありましたね。あとミュージックビデオ撮影の時に、監督の指示で「昔の自分がいると思って目線を送ってみて」と言われたんです。だから本当に 10年前の自分に語りかけているような歌にもなっているし、10年前の自分からのお手紙みたいに思える歌詞でもあるし。聞く場所、時間によってどういう人を思い浮かべるのかは、それぞれいろいろあるだろうと思います。
先ほど、ラブレターと感じたとお話されていましたが、特にどのフレーズに感じましたか?
大原櫻子:最初の<ねえ 元気でいますか?>というのはお手紙ですよね。それで<君のことだから 頑張りすぎているんじゃない?>と。やはりここは『頑張ったっていいんじゃない』が思い返されますし。あと<これから10年も lala♪>というのは、まさにファンの人に向けてのメッセージでもあるし。こうやって再会できた亀田さんが言ってくださるのも、またこれから10年も 見守っていてくださるんだという嬉しさがあります。
なるほど。あと<眠れない夜も超えてきた>という歌詞と<重たい朝も跳ね除けていく>という歌詞がありますよね。<眠れない夜も超えてきた>というのは想像しやすいのですが、 朝は一般的に希望に満ちた表現が多い気がするんです。でも<重たい朝も跳ね除けていく>と言う言葉は、苦労を重ねてきた人だからこそ語れるのだなと感じました。
大原櫻子:確かに寝れば忘れるみたいなところがあるけれど、大きなイベントごとの前などでは緊張で起きてしまう、といったことはたくさんありました。デビュー当時、亀田さんがTwitterで「早起きした。先手必勝。今日も笑ってこう」といったことを毎朝つぶやいてらっしゃって。まさに跳ねのけていらっしゃるんだな、と思いました。
大原さんご自身は、どうやって重責を跳ね除けてきましたか?
大原櫻子:跳ね除けられてないんですよ。今でも震えますし、怖いですね。「いつになったら楽しめるんだろう?」という時はあります。
だからそのたびに何か言葉を見つけたり、元気になる音楽に出会うことは、すごく大事にしています。