【インタビュー】“泣けるレンジ”。「トワノヒカリ」を完成させたORANGE RANGEが語る、楽曲の魅力とこれまでとこれから。
ORANGE RANGEがNew Single『トワノヒカリ』を完成させた。本作は、映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』の主題歌であり、名曲『花』を彷彿とさせる至極のバラードに仕上がっている。今回は、そんなORANGE RANGEの5人に今作『トワノヒカリ』についてはもちろん、近年の活動について、そして来年突入する25周年イヤーについてなど、たっぷりと話を聞いた。
「花」のような名作を
今作『トワノヒカリ』は映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』の主題歌。まずはどのような経緯で主題歌を担当することになったのか、教えてください。

HIROKI:最初お話をいただいた際、脚本が『いま、会いにゆきます』の岡田惠和さんということもあり、もう1度『花』のような名作をというような形でお受けすることになりました。制作の手順としては、先に映画を観させていただいて、そこから曲を書き始めました。
メンバー全員でご覧になったんですか?
HIROKI:そうですね。スタッフも一緒に試写会の席を設けていただいて観ましたね。
純愛をテーマにした映画、実際にご覧になっていかがでしたか?
HIROKI:ざっくり最初に「こんな映画です」と聞いていた段階では、若い子たちの恋愛映画なのかなと思っていたんですけど、実際に観てみると恋愛が中心にありつつも、家族愛や友情、さまざまな愛が混在していて、大切な人を想う内容になっていたので、シンプルに若い人だけというよりは、幅広い世代の方が感情移入して楽しめる映画なのかなと感じました。
ORANGE RANGE – トワノヒカリ (Music Video)【映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』主題歌】
なるほど。その上で『トワノヒカリ』はどのように構築されたんですか?
NAOTO:映画を観て、翌日とかかな? 間を空けずに取り組むことが出来たので、制作に入る新鮮さは結構あって。その上で迷いもありつつ…。なので、「この曲で行きます!」という感じではなく、3〜4曲制作して、映画の制作陣も含めてそこから選んでいただく形を取りました。事前の要望も加味した上で選んでいただく作業からスタートしましたね。
サウンド面においては、壮大かつ多幸感のある仕上がりだと思いました。
NAOTO:要望としてピアノとストリングスを入れること、ミディアムテンポであること、あとは細かいオーダーを汲み取ってという形で何パターンか出しました。今作は特に歌詞が重要なので、多少メロディを変えてでも歌詞を優先してほしいという要望もあったので、HIROKIが書いてきた歌詞に対して、メロディを変える作業があったので、それは今までにない制作だったというか、新鮮ではありましたね。だから、当初作ったものよりメロディがガラッと変わった部分もありますね。
YAMATOさんは、『トワノヒカリ』にどういった印象を持たれましたか?

YAMATO:デモに対する印象は、壮大さや静けさなど、強弱の緩急があって。今まで僕たちと関わってくださった方たちとの再びの繋がりもある楽曲だったので、より気持ちを込めて取り組もうというふうにデモ聴いた際に思いました。
その思いは、岡田さんとの改めての邂逅やソニーミュージックとの再タッグということも反映されている。
YAMATO:そうですね。やはり、また再会できるというのは嬉しいですよ。それぞれが離れている間に培った経験やスキルを持って、再会して、一緒にできる嬉しさやいろんな感情がありながら、このデモを聴いて「また一緒にできるんだな」と感慨深くなりました。あの時より、もっと強い意志を込めて取り組もうと思えたんですよね。
素敵ですね。RYOさんはいかがでしたか?

RYO:HIROKIが書いた歌詞から感じたのは、めちゃくちゃ言葉を大切に置いてきているなということで。だから、最初は歌詞を読み込むところからスタートしましたね。考えて歌詞を書いてくれたのが、その言葉から伝わったんですよ。
歌詞を読み込むということは、普段からよくされることですか?
RYO:ストーリーじゃないですけど、時間の経過を今回の歌詞から感じたんですよ。となった時、自分が歌う箇所では、ポジティブで前向きな場所へ出口を持っていけたらいいなと。聴いた瞬間に自分の役目はそこにあるんだなと思いましたね。多幸感を助長させて、景色が広がっているイメージかなと、HIROKIの歌詞を読んで思いましたね。
YOHさんはいかがですか?
YOH:自分は試写会で映画も観た後に原作の小説も目を通したんですけど、デモの段階で何度かアップデートがある中で“文字”、“言葉”を意識することが多かったですね。それはメンバーに自分の視点を伝える部分でも意識していたことで。今作は、RYOのセクションで歌詞の提案も含めて一緒に動いていたんですけど、なるべく自分の中に物語を落とし込んでディスカッションするようにしていました。ベースプレイも含めて、すぐ反応できるように準備はしていましたね。
言葉からというのはいつもこだわっている部分ですか?

YOH:日本語って独特の間合いがあって、同じ響きでも状況によって意味が変わってきたりするし、僕も日々の中で「もう少しこういう伝え方があったな」と思うことも多々あるんですよね。多言語と比べても独特な深みというか、表裏一体な部分もあったりもするので、作品に触れる過程で湧いてきた自分なりの視点も今回は提案したいなと思ってました。今回はRYOと一緒に動きましたが、ちゃんとお互いのスタイルを尊重しながらメッセージを紡ぐ作業を共有することができたので、すごくいい機会をいただけたなと思っています。
先ほどRYOさんがHIROKIさんの歌詞について「言葉を大切に置いてきた」とおっしゃっていましたが、HIROKIさんはどのように歌詞を考えられましたか?
HIROKI:ある種、王道というか。Aメロがあって、サビがあって、YAMATOの世界観があって、最後のパートでRYOが熱いラップをするという、このバンドの中では王道ではあるんですけど、その構成の中で時間の経過や気持ちの動きを表現したかったので、冒頭では葛藤があったり、まだ前に進めていないという弱い部分もしっかりと描きたかったし、そこからの脱却というか、ラストは前を向いて歩いていくという、希望までをこの1曲の中で表現したいなと思っていました。
2025年リリースで考えると、『トワノヒカリ』まではポップでキャッチーなこれぞORANGE RANGEという曲のリリースが続いていました。その中で今回はバラード、歌詞を書くうえで脳の切り替えというか、その辺りはいかがでしたか。
HIROKI:でも、このバンドの特性上、それをずっと繰り返してきたので。慣れているといえば、慣れているし、そこがこのバンドの醍醐味でもあるから。曲の中に存在する役を演じる楽しみはありますよね。そこを受け入れてくれるリスナーもたくさんいますから、それは幸せなことですよね。
いつもなら、変化球を投げるけど
2曲目に収録されるのは、『Precious』。これは完全に私感なんですけど、2曲目はポップなORANGE RANGE節の楽曲が来るのかなと思っていたんですが、いい意味で裏切られました。
HIROKI:確かにそう言われてみたらストレートなものへの変化球を投げたがるバンドではありますけど、『トワノヒカリ』の世界観を崩すことなく、『Precious』もセットというわけではないですけど、延長線上にある楽曲なのかなと思います。
なるほど。2曲を通じて多幸感を表現したかった。サウンド面については、NAOTOさんいかがでしょうか?

NAOTO:HIROKIが言ったように、いつも真逆に行きたがるんだけど、セットというのは意識していましたね。たまたま、『トワノヒカリ』と内容が似ているなと思っていて、音もテンポ感も離れすぎないように方向性が同じで、その辺りはちょっと考えて、あまり考えないという意味の分からない感じかな(笑)。付かず離れずの距離を保って2曲が存在している感じです。
では、同時期に制作されたもの?
NAOTO:いや、全然、前だよね?
RYO:そうだね。だから、偶然の産物といえばそうなのかもしれないね。曲を書いていた時は、自分を俯瞰して見てみるみたいな感じで書いたかな。客観的に自分を見てみる書き方でした。
その書き方になったきっかけはあったんですか?
RYO:テーマがそういうふうに書いた方が良さそうなテーマだったんだと思う。そのテーマが全く思い出せないんですけど(笑)。リーダーがばーっとテーマを書いてくれていたんだけどね。
NAOTO:いや、HIROKIじゃないかな?
HIROKI:メールをチェックすれば、残っていると思います(笑)。
RYO:結構細かく書かれていたんですよね。そこから自分を客観視して書いてみようというところに辿り着いたのは覚えています。
制作の際は、テーマを共有することが多いですか?
HIROKI:主軸になる人がコンセプトやテーマを共有して、作詞はそこから広げていくことが多いですね。初期はもっとスタジオに入って、バンドっぽい作り方もありつつ、だんだんこのスタイルに固まってきたかなと。
ORANGE RANGEの最適解だったんですね。改めて、『トワノヒカリ』というシングルはORANGE RANGEにとってどんな作品になりましたか?

HIROKI:近年の制作方法というか、割と役割がしっかりと分担されていて、それをみんなで擦り合わせていくという作業が多かった中で、今作ではYOHが作詞に参加したり、タイトルを決める際にはみんなで案を出し合ったりとか、そういう時間が多かった印象があって。1案、2案出してそれで終わりではなく、いろんな方の意見を聞きながら3案、4案と試行錯誤を重ねてどんどんアップデートしていった作品なので、楽曲の仕上がりにも満足しているし、バンドの中での制作方法というか、ちゃんと全員の血が通っていることにも満足しています。
近年は割とデータでのやり取りが多かったですし、ジャッジに関しても自分達自身でというのが多かったんですけど、ソニーさんと再びご一緒することでいろんな方の意見も聞きながら、チームで1つの作品を作れたなという自負はありますね。
ちなみに、Lotusという媒体名には、蓮の花という意味があるんですが、いつも作品を花や植物に例えていただく恒例の質問があるんですが、本作『トワノヒカリ』を例えると、何になるでしょうか?

HIROKI:それは、絶対ね?
YAMATO:もうジャケットに出ているじゃないですか(笑)。
HIROKI:チューリップです!
YAMATO:違うだろ!!
HIROKI:(笑)。MVもひまわり畑の中で撮影しましたし、ジャケットもひまわりですから! 例えるなら、ひまわりですね。
素敵な再会と25周年に向けて
ORANGE RANGEの2025年の大きなトピックスとしてやはりソニーとの再タッグがあると思いますが、YAMATOさんは先ほど「再会」についてお話されていましたけど、改めてどういうお気持ちですか?

YAMATO:ずっとお声がけしていただいて、その気持ちが純粋に嬉しかったんです。その上で今回一緒にやらせていただいているんですけど、最初の頃は僕たちも20代前半でそこから酸いも甘いも経験して、成長したわけで。だからこそ当時できなかったことや思い続けてくださったソニーさんに応えたいと思いますよね。もちろん当時も一生懸命ではあったんですけど、そこにより丁寧さをプラスした作品を2025年は立て続けにリリースすることができているから、改めてこの再会に喜びを感じているし、この喜びを次回作にも活かせるように取り組んでいきたいと思っています。
RYO:戻ってきていちばん思ったのはスタッフさんの若さというか。そこから学ぶことも多いんですよ。いまのORANGE RANGEにやってほしいこと、「これをしたら面白いですよ」という自分達とは異なる角度からアイデアをくれるので、そこを信頼して新たなものを作っていきたいですね。自分達だと見えない部分もあったりするんだけど、そういう部分を教えてくれるので、そこには頼りながら一緒に作っていきたいです。
近年のORANGE RANGEの活動を見ていて思うのは、ネットと密接に関わっている印象があって。例えば、TikTokでRYOさんのダンスがバズったり、SNSからORANGE RANGEを知るという機会も増えたと思うんです。
RYO:やっぱり自分達がデビューした時にはその入り口がなかったので、今はネットやSNSが主流という感じですから、それは取り入れないといけないですよね。そこから見える新しいORANGE RANGEを自分も見てみたいので、その部分はどんどん広げてもいいんじゃないかなと思っています。
HIROKI:もちろんそれが全てとは思わないけど、1つの選択肢として重要だよね。そこを楽しみながら新しい血を入れて、このバンドをより面白い遊び場にしていけたらいいよね。
ORANGE RANGEの過去作がリバイバルしている印象もあって。それこそマユリカさんがネタの中で『上海ハニー』を校歌風に歌ったり、Netflixでは『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』が配信され『イケナイ太陽』がより身近に感じられるようになりました。直近まで行っていたツアーは、発表済のオリジナルアルバムにフォーカスしたコンセプトツアーでした。
HIROKI:コンセプトツアーに関しては、今回で6回目で。始めた当初は新しいことをやりたいと意気込んでチャレンジしたんですよね。SNSとの関わり方も挑戦というか、まだまだ勉強中ではあるんですけど、ここまでバズるというのは予想もしてなかったし、運の要素はもちろんありつつ、仕掛けなきゃ始まらないよなというのは、痛感していますね。いろいろなアプローチをしたからこそ、全てが繋がっていったのかなと思います。
ORANGE RANGE – イケナイ太陽 (令和ver. Music Video Behind The Scenes)
ツアーを訪れるファンの幅も広がったのでは?
HIROKI:結構、変わってきている印象です。昔から応援してくれているリアルタイムでツアーに来てくれた人はもちろん、それこそSNSで我々を知った人、『イケナイ太陽』1本で来た人が後ろの方にたくさんいたので(笑)。そこをMCでいじったりして、楽しかったですけど。お子さんを連れてくる方もたくさんいますし、自分達もファンも一緒に歳をとるだけじゃなくて、若い世代の人たちに聴いてもらえているのが嬉しいです。今回のツアーで幅の広がりはダイレクトに感じましたね。
ORANGE RANGEの裾野を広げながら、2026年は25周年イヤーに突入します。25年はどんな時間でしたか?

NAOTO:25年か。四半世紀ですね。長いようで短い、短いようで長いとよく言うと思うんですけど、ここはあえて、深いようで浅い、浅いようで深い、25年でした。
HIROKI:どういうこと? 言い回し変えただけ?
YAMATO:もう少し具体的に言えない? 分かりやすく!
NAOTO:ええ、何cmとかってこと?
YAMATO:そういうことじゃないよ!
NAOTO:あはは(笑)。25年ってちょうどいいよね〜。
HIROKI:コメントが浅いよ! 本人が言っている通りです(笑)。
NAOTO:まあ、ずっとこんな感じなんですよ。30年後もこんな感じじゃないかな? これが“NEW KAWAII”なんですよ!
HIROKI:それは、FRUITS ZIPPERに教えてもらった言葉だろ!
(笑)。YOHさん、RYOさんは25年を振り返るといかがですか?

YOH:僕は音楽に興味をもつ最初のキッカケ、入り口になりたいと思ってこのバンドに参加してました。音楽との出会いって1人1人違うじゃないですか。もちろん僕自身にもかつてはそんな出会いがあって、今でも大切な記憶として残っていて。バンドを一生懸命やっていく中で、世の中に認知されて、時代の移り変わりや様々な葛藤はありながらも、自分が最初に掲げたことを全うできるようにと思って活動を続けてきたので、今こうやっていろんな世代の方との出会いはまた違った意味でも嬉しいんですよね。
RYO:僕たちだけではなく、めちゃくちゃ変化のあった25年間だったと思うんです。特に2000年代に突入すると、変わり続けていく状況だった。例えば、デビューした頃はジャンルが厳しく線引きされていたし、「それはロックじゃない」と言われることだってあった。そこからジャンルの壁がないと言われる時代になって、デビューしなくとも有名になれる時代、そこを走り続けてきた自分達に自信を持ちたいし、今後ORANGE RANGEのようなデビューの仕方、続け方を真似てくれる人が出てきてくれたらいいなと、そんなつもりでやっていくべきじゃないかなと思います。
責任感を持つというか。

RYO:そうですね。そろそろ持ってもいい頃じゃないかなと。僕たちが追いかけていた沖縄の先輩、ああいう背中になれたらいいなと思っています。
25周年イヤーはどういう年にしたいと考えていますか?
HIROKI:ここまで続けられてきたことは、自分達の力だけではないですから、感謝を伝える場所というか、「ありがとう」と直接言えるような場所を作っていきたいですね。ライブをずっと続けてきたバンドなので、みんなで盛り上げていけたらなと思います。
YAMATO:無事に活動を続けられていることが何よりですし、長く続けるほど元気でいられることのありがたみを年々感じる年頃に入ってきているので……。とはいえ、ライブは僕らの基盤なので、そこは大事にしつつ、これからの活動1つ1つ丁寧に向き合っていけたらなと思っています。25周年という素敵なアニバーサリーですけど、変わらず僕らは僕らのペースで1つずつやっていく。みんなでORANGE RANGEを作っていけたらいいですね。引き続き、よろしくお願いします!
TEXT 笹谷淳介
PHOTO Kei Sakuhara
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