
【インタビュー】創立46年の超人気劇団! 主宰の三宅裕司に最新作の魅力を聞く

喜劇役者、ラジオパーソナリティ、テレビタレント、司会者、ラジオパーソナリティジャズドラマー……と様々な分野の第一線に立ち、今なお八面六臂の活躍ぶりを見せる三宅裕司。彼が主宰する劇団スーパー・エキセントリック・シアターの名もまた広く知られていることだろう。創立46年を迎えた現在も熱烈な支持を誇るこの超人気劇団の第63回本公演『地球クライシス SOS 〜奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ〜』が10月23日より東京池袋・サンシャイン劇場にて上演される。“日本と日本人の素晴らしさ”をテーマとして謳い、スーパー・エキセントリック・シアターが旗印として掲げる“ミュージカル・アクション・コメディー”を柱として織りなされる本作は、現代日本が抱える問題を容赦なく浮き彫りにしながらも、誰にとってもわかりやすく楽しめる名作として、観る者の心にいつまでも残り続けるに違いない。若い人にこそ観てほしいと三宅が語る本作、また、劇団スーパー・エキセントリック・シアターや、三宅の目指す喜劇について、その魅力をとことん語ってもらった。まだ生の舞台に触れたことのないあなたも足を運んでみたくなること必至です。
だったら自分で作るしかないな、と
この秋、三宅さんが主宰されている劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下、SET(エスイーティ)が第63回本公演『地球クライシス SOS 〜奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ〜』を上演します。まずは今年で創立46年となるSETとはどんな劇団なのかというところから教えていただけますか。

三宅裕司:一言で言えば、東京喜劇ですね。僕は小さい頃から音楽と笑いというものに触れて育ってきたんですよ。ザ・ベンチャーズってわかります?
もちろん存じています。日本にもエレキギターブームを巻き起こした、アメリカの現役最長ロック・グループですよね。テケテケサウンドで有名な。
三宅裕司:そうです。中学生の頃にベンチャーズに出会ってコピーバンドを作り、高校でリズム&ブルースとかニューロックとかもやるようになって、大学ではジャズコンボバンドとコミックバンドをやって。それと並行して高校、大学と落語研究会にも入っていたんです。とにかく音楽と笑いをやりたくて、大学卒業後には劇団に入ったんですけど、その劇団がわりと古いタイプの喜劇だったので、これはちょっと違うな、だったら自分で作るしかないと思って立ち上げたのがSETなんです。“ミュージカル・アクション・コメディー”というのがSETの旗印なんですけど、ミュージカル=歌って踊る、アクション=喧嘩シーン、そしてコメディー=笑いがある、そういうものを作りたくて。誰にでもわかりやすくて、ずっと楽しくて、最後にちょっと感動できるような。
変に小難しくするのではなく。
三宅裕司:そうなんです。当時はアングラ(アンダーグラウンド)なお芝居が流行っていて、難しければ難しいほどカッコいいというような風潮があったんです。お客さんも「俺はこの芝居、わかるぜ」みたいな、そういう優越感をくすぐるような芝居がウケていたんですけど、僕には全然わからないし、好きではなかったんです。僕がやるならそうではなく、ストーリーがわかりやすくて、サービス精神旺盛で、観る人がずっと興奮していられるお芝居がいい。笑いあり、歌あり、アクションシーンも満載で、それでいて最後はホロッとするようなエンターテインメント劇団でありたいなと思っていて。
かなり画期的だったのではないですか。
三宅裕司:当初から結構、注目されてはいました。その後、劇団がちょっと有名になった頃には、周りもみんな同じようなことをやっていて。笑いのすごさにたくさんの人が気づいて、みんなが笑いを取り入れるようになったんでしょうね。
大衆的な笑いはけっして古くない
三宅さんはなぜそんなにも笑いというものに魅了されるようになられたのでしょう。

三宅裕司:僕が生まれ育ったのがそういう環境だったんですよ。神田神保町っていう東京の下町で母が日本舞踊のお師匠さんで叔父が芸妓の置き屋をやっているような家の育ちなんですけど、当時は浅草の喜劇がいわゆる東京のコメディで、例えば雲の上団五郎一座、三木のり平さんと八波むと志さんの『源冶店(げんやだな)』という歌舞伎のパロディをお茶の間に1台のテレビで観て、みんなで大笑いしていたんです。おじいちゃんから幼稚園の子まで、みんな一緒に。その感覚がずっと自分のなかに息づいているんですよね。でも、そういう笑いはどんどんなくなって、今やひとり1台、テレビの代わりにスマホで観ているような状況でしょう? そうすると自分の好きな笑いだけを観ればいいわけで、やるほうも大衆的な笑いはもう古いという意識になっていって。自分の笑いが好きな人だけ集まってくれればいいっていうのが今の芸人さんたちだと思うんですよね。そのぶん、いろんな笑いが生まれているとも思うんですけど。
たしかにどんどん細分化されてきている気はします。
三宅裕司:でも大衆的な笑いっていうのはけっして古いわけではないんですよ。幼稚園の子からお年寄りまでが一緒に笑えるような、わかりやすくて、今の時代にもふさわしい笑いがあるということ、僕が作っているのはそういうものなんだっていうことをぜひたくさんの人に知ってほしいですよね。
SETには三宅さんや、長年ともに歩んでこられた小倉久寛さんをはじめとして70代で活躍されている方もいらっしゃれば、20代の劇団員もいらっしゃると伺いました。こんなに幅広い年代の団員を擁した劇団はおそらく日本で唯一だと思うのですが、それはやはり今おっしゃったどの世代も一緒になって笑えるものをずっと追求なさってきたからこそでしょうね。
三宅裕司:単純に長く続いているからというのもあるとは思いますけど(笑)。僕が最年長の74歳で最年少が21歳、それこそ年寄りから孫世代まで、ものすごい年齢幅の劇団員が47人、一緒になって東京喜劇を作っています。
爆笑すると脳が柔らかくなる
三宅さんがおっしゃる“東京喜劇”というものをもう少し詳しく教えていただけますか。

三宅裕司:定義はまったくないんです(笑)。ただ、大阪の喜劇である吉本新喜劇は役者さんそれぞれの得意技があって、お客さんもそれを待っているじゃないですか。僕が作る東京喜劇はそうではなく、毎回毎回、物語の設定をいかに面白く演じて、お客さんを楽しませられるかという笑いなんですよね。三谷幸喜さんが作っているのもそういうものだと思うんですけど、SETの場合は吉本新喜劇と三谷幸喜さんの中間といいますか。設定がしっかりあって、その設定を役者の表現力で表現するんですけど、実はちょっと素に戻ってもいい、みたいな。
素に戻る?
三宅裕司:演じている最中に役柄ではない三宅裕司がふと出てきてもいいし、台本にはない時事ネタをちょっと挟んでみてもいいんです。それが笑わすためのものならば。で、ワーッと笑いが増えたところから、また何事もなかったようにストーリーに戻って、最後の感動まで持っていく。笑いってすごいんですよ。ワーッと爆笑すると、脳がすごく柔らかくなるんです。そうするとずっとシリアスで通すより、最後の感動がより大きなものになる。脳が柔らかくなることで感情を出しやすくなるんでしょうね。
そんな効能が笑いにあったとは!
三宅裕司:あと、カッコ良さや粋なところと、カッコ悪さの落差で笑わすっていうのも特徴かもしれないですね。音楽はあくまでもカッコ良く、レベルの高いダンスで魅せる。アクションもそう。でも、登場人物はすごくカッコ悪いドジなやつっていう(笑)。逆にドジでカッコ悪いやつが、歌い出したらすごくカッコいいとか。そうした落差の大きさを求めているのも東京喜劇です。
そうした落差って、人間くささとは違うのでしょうか。
三宅裕司:ちょっと違うかな。カッコつけているのが本当にカッコいい場合もありますけど、次に来るカッコ悪さを引き立たせるためにわざとカッコ良くしているところが東京喜劇にはありますから。もちろん人間くさい部分もあるんですけど、あくまで計算された落差ですよね。そういう意味では、人間くさいというよりむしろ詐欺師みたいな(笑)。オチのためのフリっていう部分がすごく大事になってくるんです。そこはやっぱり喜劇ですから。
モチベーションはカーテンコール
それにしても46年もの間、立ち止まることなく続けてこられたというのが本当にすごいですよね。もうやめてしまおうと思われたことはありませんでしたか。

三宅裕司:いや、ありましたよ。劇団の名を上げるために芸能界でコント番組とかやり始めたんですけど、そのうちコント番組の企画が通らなくなって、そのあと司会者になったんです。でも、やってみたら司会者も面白くて。で、司会の話がどんどんくるようになってテレビに出続けなきゃならなくなったときに「あれ? このまま俺、司会でずっとテレビに出ていたら、劇団はどうなるんだろう?」って思ったんですよね。実際、劇団に費やす時間がなくなってきていましたし、これじゃあ劇団員に申し訳ないな、やめたほうがいいのかなって頭をよぎったことはありました。
それでも、やめなかったのは……。
三宅裕司:なんででしょうね? 明確な理由はないですけど、やめようと思ったらいつでもやめられるって思ったからかな。だったら、もうちょっと頑張ってみようぜって。旗揚げメンバーが一生懸命フォローしてくれたっていうのもありますけどね。その人たちに報いなきゃいけない、だから劇団を続けなきゃっていう気持ちもあったと思います。
とはいえ、毎年、新しい作品を作り上げて上演し続けるって並大抵の情熱ではなし得ないですよね。三宅さんのモチベーション、その源泉が知りたいです。
三宅裕司:カーテンコール、特に千穐楽のカーテンコールですね。そこでお客さんの拍手がパラパラとしたものだったり、義理での拍手だったら、もう次の年はやらないと思うんです。でも毎回、必ずハートに来るような、「いやぁ、本当に良かったよ!」っていう熱い想いがこもった拍手だと感じられるんですよ。そうすると「よ〜し、また来年! 次は何をやろうかな」って気持ちになるんですよね。それは劇団員全員、同じ気持ちだと思います。問題は体力(笑)。大変なんですよ、本当に(笑)。
日本をもう一回、見直してみよう
さて、今回上演される『地球クライシス SOS 〜奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ〜』はどんな作品なのか、聞かせていただけますか。

三宅裕司:これは劇団員の小暮邦明が脚本を手がけた作品なんです。彼が「旗揚げメンバーの活躍する作品が作りたい」と言って、構想を練ってくれて。舞台は日本のとある村で、その村にある昔からの大切なものを守ろうとする年寄りたちと、過疎化する村を立て直すために古い慣習は捨てていこうとする青年団との対立から物語が始まるんですけど、そうしたなか、地球外生命体から「地球の代表として日本という国の人と話がしたい」というメッセージが届いたとアメリカから日本政府に指令が入るんですよ。当然、政府は極秘で議論を重ねるわけですけど、結論として、日本のことをよく知っている年寄りが交渉にあたったほうがいいだろうということになるんです。その任務を果たすことができそうな年寄りというのが実はその村にいて——みたいな。そこから、村の若者と年寄りの関係がどうなっていくのか、日本はアメリカの要求に応えられるのか、そして地球とその地球外生命体のいる星との付き合いがどうなるのか。話が進むにつれて今回のテーマである“日本と日本人の素晴らしさ”が浮き彫りになっていくような作品になればいいなという感じですね、今の段階では。
めちゃくちゃ面白そう!
三宅裕司:でしょ? ストーリーだけはね(笑)。ここからですよ、大変なのは。これをミュージカル・アクション・コメディーに仕上げていくんですから。思いっきり笑って、楽しんで、最後には感動して、そして日本をもう一回、見直してみようと思えるきっかけになれば嬉しいんですけど。
“日本と日本人の素晴らしさ”をテーマにされているということは、逆に日本や日本人の良さが薄れてきているような危機感を感じていらっしゃるのでしょうか。
三宅裕司:それはすごく感じますね。僕らは“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と言われた時代に育ってきましたけど、今は見る影もなくなってしまって。世界の幸福度ランキングもすごい勢いで下がっていますし、「どうしちゃったんだ、日本」っていう気持ちはものすごくあります。本来、日本人って素晴らしいものを持っていると思うんですよ。東日本大震災のときに外国の人たちが驚いていたじゃないですか。誰もコンビニを襲わないし、食料や物資の配給をちゃんと列になって順番を待っているし、日本人はこんなにも礼儀正しくて他人のことを考えられる民族なのかって。
そうでしたね。
三宅裕司:江戸時代に遡れば、当時から識字率が世界でもトップクラスに高くて、そうしたなかで落語のような権力を笑う文化が生まれたり、歌舞伎や俳句が庶民の間でも楽しまれていたり、精神的な豊かさがあったんですよね。もどき料理なんていうのもそうですよね。貧乏暮らしでもお金持ちが食べているような料理に見立てたものを知恵と工夫で作って、それを江戸の人は楽しんでいた。がんもどきなんか、その最たるもので。江戸時代に日本に来た外国の方が残した文献があるんですけど、そこには「長屋の人たちはみんな貧乏だけど、誰ひとりそれを苦にせず、みんな笑顔で生活を楽しんでいる」って書いてあるんです。それほどの幸福度、文化度の高さを誇っていた日本はどこ行っちゃったんだろうなって。そういうことに気づくきっかけとしても、今回のテーマはかなりいいんじゃないかと思っています。
笑いを共有する素晴らしさを味わって
ますます興味が湧いてきました。若い方にもぜひ観てほしいですね。
三宅裕司:むしろ若い方にこそ観てほしいかもしれない。劇場に足を運ぶのは敷居が高いと感じるかもしれないですけど、予約してチケットを買って、ちょっとおしゃれをして、交通機関を使って劇場へ行って、そこでたくさんの人と一緒に同じ笑いを共有するほうが、部屋でひとりでお笑いを観ているときより数倍、爆発力がありますから。一度体験したら、それがどれだけ楽しいことなのか、はっきりわかりますよ。みんなで一つのものを観る楽しさ、素晴らしさをぜひ味わってほしいですね。
最後に、当サイト名の“Lotus(=蓮の花)”にちなみまして、『地球クライシス SOS 〜奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ〜』を花や植物にたとえて何かメッセージをいただけますか。
三宅裕司:街の花屋さんで見かける花よりも、山奥の「こんなところにはない」と思っていたところで見かけた花のほうがより美しく見える。そんな経験をぜひ劇場でしてください。この作品と一緒にお待ちしています。……こんな感じでどうでしょう?
うわぁ、素敵。さすがです!
三宅裕司:やったね、褒められた(笑)。
TEXT 本間夕子
PHOTO Kei Sakuhara
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公演情報

■劇団スーパー・エキセントリック・シアター第63回本公演
ミュージカル・アクション・コメディー
「地球クライシスSOS~奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ~」
脚本 :小暮邦明
演出 :三宅裕司
出演 :三宅裕司 小倉久寛
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
劇場 :サンシャイン劇場
所在地:〒170-8630 東京都豊島区東池袋3-1-4 サンシャインシティ文化会館4F
日程 :2025年10月23日(木)~11月3日(月・祝)
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— Lotus編集部 (@lotus_magic_d) April 1, 2024
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