【インタビュー】Lead「ニューアルバムは好きを詰め込み、わがままに遊んだ」
3人組ダンス&ボーカルグループLeadの4年半ぶりのアルバム『XTLIKE』が9月4日にリリースした。メンバーの鍵本輝が作曲、古屋敬多と谷内伸也が作詞に関わったロックサウンドのリード曲『Don’t Stay』は、Netflix映画『範馬刃牙VSケンガンアシュラ』のエンディング主題歌。このタイアップはコンペティションを勝ち抜いてつかんだものであり、3人にとって非常に大きな経験だったという。またLeadの先輩であるw-inds.の橘慶太が、彼らのために制作した『GRAVITY』も収録。長年応援し続けてくれているファンとの絆が描かれていて、心揺さぶられるナンバーとなっている。着実にキャリアを積み重ねつつも、つねにさわやかで新鮮な魅力を届ける彼らの今を凝縮したこの一枚について、メンバーに語ってもらった。
勝ち取りたいと挑んだED主題歌制作
4年ぶりにニューアルバム『XTLIKE』がリリースされますが、今回は制作するにあたってどんな点にこだわりましたか?
谷内伸也:アルバムは本当にいい意味で遊べるので、よりすぐりの好きな曲を自分たちの好きなように、いろいろな思いを入れることを意識しました。今回はタイトルにも“LIKE”が入っていて、まさに好きを詰め込み、わがままに遊んだという感じですね。
古屋敬多:このアルバムに関しては「10枚目だからこうしよう」みたいなのは、逆になかったんです。 本当に自分たちの好きを詰め込めば、 集大成的なものが自ずと完成するのかな、といった肌感でやっていましたね。
谷内伸也:ただコロナ禍を経験して今まで経験してない感情や考えが生まれたので、そういう意味では、今までと違う特別感があったと思います。
自分たちの好きを詰め込んだというお話でしたが、コロナ禍を経たこの4年、好きの表現で変化した点はありましたか?
鍵本輝:思いを形にしていきたい。好きなものを好きで終わらせず、それを共有できたらいいな、と思うようになりました。 今回のアルバムは全曲ではありませんが、なるべく自分たちも携わりたくて。もし誰かにお願いするにしても、この作家さんにお願いしたいと逆指名したりしたんです。だからクリエイティブに関しての思考は、だいぶこのコロナ禍で変わったと思いましたね。
なるほど。それではアルバムの収録曲についてお伺いしていきたいのですが、リード曲『Don’t Stay』はロックサウンドで熱いナンバーですね。
谷内伸也:デビュー当時にお世話になったレコード会社の方からコンペティションの依頼を受けて、輝が曲を作ったのですが、その時はデモ状態で、歌詞はまだ完成していませんでした。でもありがたいことにエンディング主題歌として取り上げていただいて。そこから敬多と佐伯youthKさんが共作で歌詞を上げてくれました。その歌詞がすごく『範馬刃牙VSケンガンアシュラ』の泥臭く戦って前に進んでいくといった世界観を表現していて。
そのバトンを受けて、僕はラップパートの歌詞を書きました。ラップは言葉数や情報量が多い。だからすぐに聴き取ってもらえないことがあるため、なるべく1回で分かるように自分の中で法則を作ったんです。
具体的には韻を踏む場所が大きく2つに分けられるんですけれど、4行あったら1行目で2つ踏んで、2行目で1つ踏む。3行目でまた2つ踏んで、4行目で1つ踏む。そういった法則を使って、キャッチーさを意識しました。あとは滑舌に気を付けましたね。
今回、タイアップしている作品の世界観に負けない勇ましさを出すために 輝と敬多の2人が「伸也、もっといけ!」みたいな感じで、ブースの外から立ちながらディレクションしてくれて。すごく奮い立たしてくれました。ここのテイクは何回もやって、絞り出した感じでしたが、おかげさまでまたLeadの新しい一面が出たと思いますね。
コンペでED主題歌を勝ち取ったことは、Leadにとって大きな経験だったんですね。
鍵本輝:そうです。すごくうれしかったですね。 本当に名だたるアーティストさんが横並びにいらっしゃったので、「いや、これはいけるのだろうか?」と思ったんですけれど、 もともと作っていた楽曲が『範馬刃牙VSケンガンアシュラ』の色に溶け込めるように、何度も何度も自分の中でリアレンジして。どうしたらいい感じに聴こえるかといったことを研究しながら完成させました。メンバーに聴いてもらった上で、「行け!」と思ってデータを送ったので、気持ちで主題歌を取れたのではないかという気がします(笑)。
歌詞についても敬多がこの作品の大ファンなので、 「これは熱を持って挑むでしょう」と思っていました。
古屋敬多:これは正直誰にも渡したくなくて、もう絶対勝ち抜きたい、勝ち取りたいという思いでした。Netflixに関する作品作りも初めてだし。 普段 Netflixをすごく見ているので、どれだけ大きな話かということは肌で感じていました。ここを勝ち抜いた時に、また次のステージというか世界的に注目を浴びたらいいなとか、いろいろな想像がぱっと膨らみましたね。だから勝ち抜いて、すごくうれしいです。
特にご自身で気に入っているフレーズは何でしょうか?
鍵本輝:<見上げてたその背中は 近づくほど大きくて>のところは、すごく頑張ったと言っていなかった?
古屋敬多:そうですね。背中というのは『範馬刃牙』の1つのテーマであるんです。刃牙のお父さんは、その背中に鬼を飼っているんですよ。筋肉で鬼の顔になっているのですが、やはり背中というワードは外せなかったです。
キャラクターの特徴を歌詞に落とし込むのは難しいですよね。
古屋敬多:そうなんです。今回も急に「背中」と出てきてもおかしいし、それをなじませるのがすごく難しかったです。あとはお父さんが『範馬刃牙』の話の中で、最強なんですよ。地球で一番強い。だからお父さんの見ている景色は複雑なんです。敵がいなくなると頂点に行った時に待っているのは、孤独しかないみたいな。実際に「強者の孤独」という話があるんです。
だから『Don’t Stay』の歌詞の中に<超えた先に待つのが孤独の静寂だとしても>というスフレーズがあるのですね。
古屋敬多:はい、そこに思いを入れています。
皆さんの本当に強い思いがこの曲に入っていることが伝わります。
鍵本輝:今回は初めての経験ばかりでした。アニメのエンディングは尺が決まっているから、その尺内に曲を終わらせるとか。先方から台本をいただいて、この台本を読んだ上で歌詞を書いていくこととか。でも、今やれて本当によかったと思います。
Leadとファンの絆を曲にしたかった
もう1つのリード曲『GRAVITY』。雄大かつ感情が自然に高まる美しい楽曲ですが、これはw-inds.橘慶太さんプロデュースだそうですね。
谷内伸也:これは2年前くらいにいただいて。そこからだいぶ温めました。
ご依頼された当時は、どういう状況だったのですか?
鍵本輝:ちょうど20周年のタイミングだったので、本来だったら20周年のタイミングでオリジナルアルバムを出せたらという思いもあったんです。その時に慶太さんに「慶太さんの楽曲が欲しいです」とお話したら、「どういう楽曲がいいの?」となって。僕ら的には「こういった楽曲が良くて」と説明したところ、慶太くんからいただいたのが『GRAVITY』なんです。
ただ曲をいただいてから、なかなか着地点や出口が決まらない状態が続いていたんですけれど、やっと今年、このタイミングでアルバムが出ることになったのでいろいろ動き出しました。
古屋敬多:『GRAVITY』は本当に名曲で大好きなんですけれど、 2年も何も手付かずでこっちが持っているので、慶太さんから「ちょっとそろそろ1回返してもらっても?」もみたいに言われるようになりました。
鍵本輝:確かに慶太くんに言われました(笑)。
谷内伸也:ちょっと長すぎたよね(笑)。
この曲を受け取った当時の思いについて、伺わせてください。
鍵本輝:最高だなと思いました。Leadらしさもありながら、慶太くんらしさも薫ってくるし。
古屋敬多:w-inds.さんの曲も多く手掛けて見たり聴いたりしているから、「あ、慶太さんっぽいな」というのは、ぱっと聴いた時に思いました。
歌詞はデビューからのLeadの軌跡になっていますよね。
鍵本輝:いろいろな時間軸で書きたいなとは思っていたんですけれど、Leadを語るなら、この22年の歴史があるので、そこは絶対描くべきだろうなという思いはありました。
GRAVITYは引力、重力という意味で、 これを僕たちとファンの曲にできたらと思ったんですね。僕たちは音楽やパフォーマンスをライブで見せて、それにファンの方々が惹かれている。それも1つの引力だと思うし。ファンの方が 僕らのライブを見てポジティブな気持ちを持ったり、笑顔になってくれたりしてくれることで、僕たちはそれにまた惹かれていくし。そういったことを『GRAVITY』で描けたらなと思ったんですよ。お互いの感情のキャッチボールをうまく歌詞にのせられたら素敵かなと。
古屋敬多:そういった輝の思いを聞いたので、この曲を歌う時はうんと心を込めて歌おうと考えて、ある意味、重力を感じました。
あとこの曲がすごいなと思うのは、歌詞とサウンドです。最後の方になっていくにつれて、僕たちの気持ちがサウンドと一致していき、すごくシンクロして心の音みたいになるんです。だから曲を聴きながら、一緒に盛り上がっていけるんですよね。
後半になって、ギアが上がっていくのを感じます。
古屋敬多:そうですよね。フェイクとかも絡んできて、そう思います。
あとコーラスもすごく美しいですね。
鍵本輝:それは実は……。種明かししていいですか?
谷内伸也:言っちゃうか(笑)。
鍵本輝:これは初めて言うんですけれど、コーラスは慶太くんの声です。
ええ、そうなんですね!
鍵本輝:要所、要所に入っている相槌的な声も、慶太くんの声なんです。
古屋敬多:だからこれはコラボです!
w-inds.もコーラスにすごくこだわっているから、その色が濃く出ていると思ったのですが、慶太さんも参加されていらしたのですね。
鍵本輝:レコーディングの日に、「Leadのみんな、コーラスどうする?」と慶太くんが聞いてくれて、思わず「慶太くん、やってくださるんですか!?」と言ったら「え? いいけど」となって(笑)。
僕たちはw-inds.さんの『1st message』という最初のツアーでオープニングアクトを務めさせていただいて、そこからw-inds.さんとの関係を22年間築いてきました。そこもある意味“GRAVITY”なのかなとか思っています。だからこそ慶太くんのコーラスで、さらに分厚くしていただけたらと考えました。